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Kennst du das Land   Op.79-28  
  Liederalbum für die Jugend
あなたはあの国をご存じですか   
     若者のための歌のアルバム

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
    Wilhelm Meisters Lehrjahre (ヴィルヘルム・マイスターの修業時代 1796) Vol.3 Ch.1 Kennst du das Land

曲: シューマン,ロベルト (Robert Alexander Schumann,1810-1856) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Kennst du das Land,wo die Zitronen blühn,
Im dunkeln Laub die Goldorangen glühn,
Ein sanfter Wind vom blauen Himmel weht,
Die Myrte still und hoch der Lorbeer steht,
Kennst du es wohl?
             Dahin! Dahin
Möcht ich mit dir,o mein Geliebter,ziehn!

Kennst du das Haus? auf Säulen ruht sein Dach,
Es glänzt der Saal,es schimmert das Gemach,
Und Marmorbilder stehn und sehn mich an:
Was hat man dir,du armes Kind,getan?
Kennst du es wohl?
             Dahin! Dahin
Möcht ich mit dir,o mein Beschützer,ziehn!

Kennst du den Berg und seinen Wolkensteg?
Das Maultier sucht im Nebel seinen Weg,
In Höhlen wohnt der Drachen alte Brut,
Es stürzt der Fels und über ihn die Flut:
Kennst du ihn wohl?
            Dahin! Dahin
Geht unser Weg; o Vater,laß uns ziehn!

あなたはあの国をご存じですか、そこではシトロンの花が咲き
暗い葉陰では 金色のオレンジが輝いています
穏やかな風が 青い空から吹き
ミルテはひそやかに、月桂樹は堂々と立っています
あなたはそこをよくご存知ですか?
             そこへ!そこへと
私はあなたと一緒に行きたいのです、私が愛する人よ!

あなたはあの家をご存じですか、柱の上に丸い屋根が乗り
大広間は輝き お部屋はきらめいています
そして大理石の像が立っていて 私を見てたずねます
「皆はお前に何をした、哀れな子よ」と
あなたはそこをよくご存知ですか?
             そこへ!そこへと
私はあなたと一緒に行きたいのです、私をお守りくださる人よ!

あなたはあの山をご存じですか そして雲の架け橋を
ラバが霧の中で道を探し 
洞穴には古い血族の竜たちが住んでいます
岩は切り立ち その上を高波が越えている
あなたはそこをよくご存知ですか?
             そこへ!そこへと
私たちの道は続いています、おお父上、さあ参りましょう!


若者のための歌のアルバム、終曲は前の曲に引き続いてゲーテから。「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」より薄幸の少女ミニヨンの歌う有名な歌です。少女の歌とは言いながら、歌の作りも内容もおよそ若者のためというよりは、もっと人生の機微を分かったオトナが歌うような歌に仕上がっており、歌曲集前半の素朴な童謡のような曲から続けて聴いて行きますと、思えば遠くへ来たもんだ、的な感慨を覚えてしまいます。
シューマンが「ヴィルヘルム・マイスター」より詩を選んでつけたのはこれが初めてのことかと思われますが、よほど心に響くものがあったのでしょう。この作曲の直後にこのゲーテの作品から9曲の詩を選んでひとつの歌曲集を編んでおり、この曲はその第1曲として再利用されております。
シューマンの曲は重苦しく沈んだ冒頭が、心の昂ぶりとともに明るく輝かしくなり、しかし最後は再び寂しく沈んで終わるというなかなかに微妙なニュアンスに満ちたもの。この詩に付けられたあまたある歌曲の中でも最もオトナ向きの味付けと言っても過言ではないかも知れません。しっとりとしたメゾ歌手によって歌われることが多いのもそんな曲想によるところが大なのかも知れません。

( 2010.10.02 藤井宏行 )


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