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Du liebst mich nicht   Op.59-1 D 756  
 
あなたは僕を愛していない  
    

詩: アウグスト フォン プラーテン (Karl August von Platen-Hallermünde,1796-1835) ドイツ
    Ghaselen 8 Mein Herz ist zerrissen,du liebst mich nicht!

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Mein Herz ist zerrissen,du liebst mich nicht!
Du ließest mich's wissen,du liebst mich nicht!
Wiewohl ich dir flehend und werbend erschien,
und liebebeflissen,du liebst mich nicht!
Du hast es gesprochen,mit Worten gesagt,
mit allzu gewissen,du liebst mich nicht!
So soll ich die Sterne,so soll ich den Mond,
die Sonne vermissen? Du liebst mich nicht!
Was blüht mir die Rose? was blüht der Jasmin?
Was blühn die Narzissen? Du liebst mich nicht!

僕の心は引き裂かれてしまった。あなたは僕を愛していない!
あなたは僕に思い知らせてくれた。あなたは僕を愛していない、と。
どんなに僕がお願いしようと、必死に君を求めようと、
愛に身を捧げようと、あなたは僕を愛していない!
あなたは言った、言葉ではっきり表した、
あまりにも明確に、あなたは僕を愛していないと!
こうして、僕は数多の星を、月を、
太陽を失ったことを悲しまねばならないのか? あなたは僕を愛していない!
バラが咲こうと何になる? ジャスミンが咲こうと、何になる?
スイセンが咲こうと、何になる? あなたは僕を愛していない!


・・・シューベルトの作品59、4曲の連作の1曲目が、これですよ。
今、気が付きましたが、結婚を断られて人生を絶望してスタートする『冬の旅』と、
よく似ているじゃありませんか!

「あなたは僕を愛していない」が嫌というほど出てきます。
ある時はつぶやき、ある時は絶叫し、聴き手を奈落の底に突き落とすかのように。
これくらい、主人公の心にはこのショックな言葉がこだまして、消えることがないのでしょうね。
ピアノの伴奏形は、一貫してほとんど同じ、その変化のなさで重圧を与えると共に、
ときどきいきなり慟哭が入ります。

シューベルトの作品は作品番号のないものもあり、D 番号で分類されるようになって
きましたが、こと、歌曲に限ってみると、作品番号には作曲者の意図が反映されて
いるらしい。内容によって作品番号を一まとめにしようとする意図が見られるようです。

シューベルトの恋愛関係については、証明できるものはありませんが、
身分違いの報われない苦しい恋愛をしていたらしい。
有名な話もあるようですが、調査不足なので、調べる時間ができたら取り上げますね。

シューベルトにとって”Du liebst mich nicht” は、心をえぐるフレーズだったに
違いありません。ま、誰にとってもそうかもしれませんが。

あまりに直截な表現をするPlatenってどういう人なのか、気になって
少し調べてみました。
貧しくなってしまった貴族の出(だからGraf〈伯爵〉が名前につくんですね)らしい。
正式名はKarl August Georg Maximilian Graf von Platen-Hallermünde だそうです。

この人、どうもホモセクシュアルであることが知れ渡ってしまったようです。
しかも、プラーテンはペルシアの文芸を研究していましたが、ハイネが作品中で
東方かぶれを揶揄したのに怒り、自作の戯曲でハイネに対して反ユダヤ的表現をし、
ハイネとのとの揶揄争いが発展してホモセクシュアルであることを暴露された
らしい・・・。

では、この「あなた」って誰? どういうシチュエーション?
・・・なんだか突っつかないでもよい藪を突っついてしまったような気がします。--;
知らない方がいいことって、あるものですね。

*読解のポイント

2行目”'s” は”es” の省略形。”es” の中身がその後に続く”du liebst nicht!”。

3、4行目”flehend” “werbend” “liebebeflissen” は”erschien”にかかる副詞、
“liebebeflissen” は”liebe”+”beflissen”。

6行目”mit allzu gewissen,'du liebst mich nicht'“ あまりにもはっきりとした
「あなたは私を愛していない」という言葉で、5行目にあるように”gesagt” “gesprochen”
した、と考えればよいと思います。

7、8行目、相手(彼女と書いてよいのかどうかわからなくなってしまった)が
彼にとって星であり、月であり、太陽であっただろうし、あるいは恋するときは
すべてが美しく見えるもの、相手と見た美しい星や月、太陽かもしれません。

9、10行目、この”was” は辞書で言ったら「(無変化で副詞的に)どうして、
なんのために」あたりの項目が該当するでしょう。”mir” が入っているので、
「私にとって何の意味があるのだ」というニュアンスで訳してみました。


作品59 次の曲へ 美も愛もここにいたことを! D 775(OP.59-2)

メールマガジン「歌曲つれづれ」より許可を頂いて転載いたしました

( 2010.09.21 Pianistin )


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