Soi vienosti murheeni soitto Op.36-3 3 Laulua |
優しく奏でて、私の悲しみの歌を 3つの歌 |
Kun ärjyivät rannan hyrskyt, niin kantelo vienosti soi, kun ulvoivat syksyn myrskyt, se kevättä rintahan toi. Vei maailma riemuni soiton ja rintani rauhan se vei. Ja jos vieläkin kantelo kaikaa, niin iloa kaiu se ei. Soi vienosti murheeni soitto, soi hellästi kaihoni,soi! Mut hellimmin helise hälle, joka murheen mun rintaani toi. |
海が岸に向かって荒れ狂った時でも 音楽の調べは優しく、 秋の嵐が吹き荒れた時にも 調べは春を語った。 世界は私から喜びの音楽を奪った そして心の安らぎも もし私に音楽が残されていても そこには心浮き立つものはない 優しく奏でて、私の悲しみの歌を そっと奏でて、私の切なさを でも一番彼女には優しく響け 私に悲しみをくれた彼女には |
フィンランド歌曲において重要な位置を占める作曲家のひとりがこのオスカル・メリカントなのだそうです。自然で歌いやすいメロディーの曲をたくさん書いたので、フィンランド人の中にはこれが民謡だと思っている人も少なくないとか。
舘野泉さんなどが録音してるピアノ曲や室内楽曲も、北欧のドボルザークという趣でなかなか良いです。シベリウスほど強烈な個性はないですが、そこがこの作曲家のいいところなのではと思います。
フィンランド民謡というとイメージが湧きにくいところですが、今をときめくワーグナー歌手、ソプラノのカリタ・マッティラがONDINEレーベルに入れたフィンランド歌曲集の中の何曲かの民謡を聴いてみると、これはまるでロシア民謡です。文化的な影響を強く受け、一時は支配されていた歴史がそんな歌を育んだのでしょうか。
彼女はこのアルバムの中で、このメリカントの曲も何曲か歌っています。長調の曲の方が私は好きなのですが、メリカントの有名な作品はこの悲しみに沈んだような「優しく奏でて、私の悲しみの歌を」、 あるいは「さよならの子守歌」といったところなようなのでこちらを紹介します。
この曲も、ロシア歌曲のような浸り込む感傷がどっぷりと楽しめ、ロシア民謡のお好きな方にはたまらない魅力ではないかと思いますが、そればかりではない「北欧の透明感?」もお楽しみ下さい。
まあ、こういう曲ですからパワーのある歌手がふくよかな声でじっくり歌い込むのが良くて、マッティラの録音など素晴らしいですが、私はティイリカイネンのバリトン(Finlandia)の感傷に惹かれるものがあります。ロシア歌曲から北欧(バルト3国も含む)に レパートリーを広げてみると、いろいろ面白いものが見えてきます。
( 2000.08.25 藤井宏行 )