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Lob des hohen Verstands    
  Des Knaben Wunderhorn
高度な知性を讃えて  
     子供の不思議な角笛

詩: 少年の不思議な角笛 (Des Knaben Wunderhorn,-) ドイツ
    Des Knaben Wunderhorn,Band 2 26 Wettstreit des Kukuks mit der Nachtigal

曲: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Einstmals in einem tiefen Tal
Kukuk und Nachtigall
täten ein Wett' anschlagen:
Zu singen um das Meisterstück,
gewinn' es Kunst,gewinn' es Glück:
Dank soll er davon tragen.

Der Kukuk sprach: “So dir's gefällt,
hab' ich den Richter wählt,”
und tät gleich den Esel ernennen!
“Denn weil er hat zwei Ohren groß,
Ohren groß,Ohren groß,
so kann er hören desto bos
und,was recht ist,kennen!”

Sie flogen vor den Richter bald.
Wie dem die Sache ward erzählt,
schuf er,sie sollten singen!

Die Nachtigall sang lieblich aus!
Der Esel sprach: “Du machst mir's kraus!
Du machst mir's kraus! I-ja! I-ja!
Ich kann's in Kopf nicht bringen!”

Der Kukuk drauf fing an geschwind
sein Sang durch Terz und Quart und Quint.
Dem Esel g'fiels,er sprach nur
“Wart! Wart! Wart! Dein Urteil will ich sprechen,
ja sprechen.
Wohl sungen hast du,Nachtigall!
Aber Kukuk,singst gut Choral,gut Choral,
Und hältst den Takt fein innen,fein innen!
Das sprech' ich nach mein' hoh'n Verstand,
hoh'n Verstand,hoh'n Verstand!
Und kost' es gleich ein ganzes Land,
so laß ich's dich gewinnen ,gewinnen!”

Kukkuck,Kukkuck,I-ja!

昔むかし とある深い谷間で
カッコウとナイチンゲールが
コンテストをおっぱじめようと考えたんじゃ
歌でマイスター目指そうと
技で勝ち取るにせよ、運で勝ち取るにせよ
勝った者には栄誉がついてくるはずなのじゃ

カッコウは言うた:「あんたさえ構わなきゃ
わしが審査員を選んでおいたぞ」
そしてすぐさまロバの名を挙げたのじゃ
「だってロバは大きな耳を二つ持っているからな
 大きな耳を 大きな耳を
それだけよく聞こえて、
何がいいのか分かるっちゅうもんさ!」

二羽は審査員の前へとすぐに飛んで行った
ことの仔細が説明されるや否や
ロバは命じたのじゃ、彼らに歌うようにと

ナイチンゲールはかわいらしく歌った!
だがロバは言ったのじゃ:「きみのはわしをくらくらさせる!
きみのはわしをくらくらさせる! イーアー イーアー!
わしの頭はちっとも受け付けん!」

そこでカッコウが急いで歌い始めたのじゃ
やつの歌を3度と4度と5度で
こいつがロバは気に入って、彼は言った:
「それまで! それまで!それまで! 審査の結果を告げよう
 よし 告げよう
きみはとてもよく歌ったよ、ナイチンゲール君!
だがカッコウ君はすばらしいコラールを歌った すばらしいコラールを!
拍子も守られていたしな 見事に 実に見事に!
わしは自分の高い知性にかけて言うが
この高い知性に 高い知性に!
これは一国分の価値がある
だからわしはきみに勝利を与えよう 勝利を!

カッコウ カッコウ イーアー!


爽快なファンファーレの響きに乗せて、カッコウやナイチンゲール、そしてロバの鳴き声が歌に伴奏にと縦横無尽に現れる愉快な歌です。最後も自信満々なロバの勝ち誇った「イーアー」という叫びで曲を閉じます。
原題はWettstreit des Kukuks mit der Nachtigal(カッコウがナイチンゲールと歌比べ)でしたが、マーラーはたいへん辛辣なタイトルに変えてしまいました。今の世の中、専業の批評家先生だけでなくネット上のブログや掲示板などでも、このロバのように高度な知性をお持ちの方々が「××などクズだ」「凡庸な演奏家の○○」などと色々なご批判に喧しいですが、そのような知性を持っているという自信がなく、大きく踏み込んだ価値判断をするということの怖さだけは身にしみている私のようなものはただただ畏れ入るばかりです。まあ好き嫌いはどうしようもないところですから「つまらない」ということは私も時々言いますが、「下らない」ということに関しては(あえてそのクダラナサを狙っているものに対する誉め言葉としては別ですが)とても恐ろしくて私は使えないのです。まあ意識していても、こうして公に何か発言するときには少なからずの価値判断は知らず知らずになされてしまいますので、せめてあまりみっともない断定はしない方が良いのではないかと。

華やかな歌であるばかりでなく、最後のいななきにとてもインパクトがあるからでしょう。アンコールなどでもよく取り上げられる作品です。普段言いたい放題に言われている批評家へのお返しでしょうか。得意満面な最後のロバのいななきは一段とグロテスクに仕上げられて聴衆の爆笑を誘います。

(2010.08.07)

訳詞改訂を致しました。

( 2012.08.31 藤井宏行 )


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