TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Der Totentanz   Op.44-3  
  Drei Balladen
死の舞踏  
     3つのバラード

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Der Totentanz (1813)

曲: レーヴェ (Johann Carl Gottfried Loewe,1796-1869) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Der Türmer,der schaut zumitten der Nacht
Hinab auf die Gräber in Lage;
Der Mond,der hat alles ins Helle gebracht;
Der Kirchhof,er liegt wie am Tage.
Da regt sich ein Grab und ein anderes dann:
Sie kommen hervor,ein Weib da,ein Mann,
In weißen und schleppenden Hemden.

Das reckt nun,es will sich ergetzen sogleich,
Die Knöchel zur Runde,zum Kranze,
So arm und so jung und so alt und so reich;
Doch hindern die Schleppen am Tanze.
Und weil hier die Scham nun nicht weiter gebeut,
Sie schütteln sich alle,da liegen zerstreut
Die Hemdelein über den Hügeln.

Nun hebt sich der Schenkel,nun wackelt das Bein,
Gebärden da gibt es vertrackte;
Dann klippert's und klappert's mitunter hinein,
Als schlüg' man die Hölzlein zum Takte.
Das kommt nun dem Türmer so lächerlich vor;
Da raunt ihm der Schalk,der Versucher,ins Ohr:
“Geh'! hole dir einen der Laken.”

Getan wie gedacht! und er flüchtet sich schnell
Nun hinter geheiligte Türen.
Der Mond und noch immer er scheinet so hell
Zum Tanz,den sie schauderlich führen.
Doch endlich verlieret sich dieser und der,
Schleicht eins nach dem andern gekleidet einher,
Und husch! ist es unter dem Rasen.

Nur einer,der trippelt und stolpert zuletzt
Und tappet und grapst an den Grüften;
Doch hat kein Geselle so schwer ihn verletzt,
Er wittert das Tuch in den Lüften.
Er rüttelt die Turmtür,sie schlägt ihn zurück,
Geziert und gesegnet,dem Türmer zum Glück;
Sie blinkt von metallenen Kreuzen.

Das Hemd muß er haben,da rastet er nicht,
Da gilt auch kein langes Besinnen;
Den gotischen Zierat ergreift nun der Wicht
Und klettert von Zinne zu Zinnen.
Nun ist's um den armen,den Türmer getan!
Es ruckt sich von Schnörkel zu Schnörkel hinan,
Langbeinigen Spinnen vergleichbar.

Der Türmer erbleichet,der Türmer erbebt,
Gern gäb' er ihn wieder,den Laken.
Da häkelt - jetzt hat er am längsten gelebt -
Den Zipfel ein eiserner Zacken.
Schon trübet der Mond sich verschwindenden Scheins,
Die Glocke,sie donnert ein mächtiges Eins,
Und unten zerschellt das Gerippe.

塔の見張りが 真夜中に見下ろしている
下の方に並んだ墓を
月は明るくあらゆるものを照らして
墓場はまるで昼間のように横たわる
そのとき墓がひとつ またひとつと動いた
やつらが出てくるぞ 女がひとりあそこに、男がひとりと
白いひらひらした経帷子を着て

やつらは伸ばす、すぐにでも宴会を始めようと
自分のかかとを 輪舞をするために
貧乏なのも 若者も 年老いたのも 金持ちも
けれどひらひらの着物はダンスには邪魔だ
もう恥ずかしがることもないのだから
みんな体をゆすって脱ぎ散らかす
経帷子を塚の上に

さて太腿を上げて、さて脚をばたばたさせて
その姿は実に滑稽だ
合間には時々カタカタコトコトと
木琴を棒で叩くような音がする
こいつが塔の見張りにはおかしくてたまらない
彼の耳もとに悪者、誘惑者がささやく
行け! 帷子を一枚取ってきてしまえ と

思い立った通りにやってしまった! 彼は急いで駆け込む
神聖な扉の向こう側に
月はまだとても明るく輝いて
彼らの続ける不気味な踊りを照らし出す
だけどついにはひとりふたりと止めて
帷子を着るやいなや
さっと芝の下に潜り込む

最後にひとりだけ、つまづきよろよろと
墓穴の中を手探りで探し回ってる
だが 仲間の中にはこんなひどいことをしたやつはいないようだ
彼は風の中に帷子の匂いを嗅ぎ取る
塔の扉を揺するが 跳ね返されてしまう
飾りと福音のために、塔の見張りには幸いだったのだが
扉には金属製の十字架がつけられていたのだ

経帷子は取り返さねばならん、休んでいる暇はない
ためらうことなく
ゴシック装飾の壁にしがみついて
石から石へとよじ登ってゆく
哀れな塔の見張りはもうおしまいだ!
やつは突起から突起を伝って昇ってくる
長い足の蜘蛛にそっくりだ

塔の見張りは真っ青で ガタガタ震える
帷子なら喜んでお返ししよう
ところが引っかかってしまった-今や彼は絶体絶命-
その裾が鉄の釘の先に
だが 月はその光を褪せさせていた
時の鐘が力強く一時を告げる
骸骨は下に落ち 粉々に砕け散った


ゾンビ映画を目の当たりにするようなけっこう恐ろしい情景なはずなのですが、この塔の見張りはどうしてまたこんな馬鹿なことをやる気になったのだか?臆病者の私としましては全くもって不思議なところです。
実は毎晩このような死者たちの饗宴が繰り広げられていて、彼にとってはすっかり見慣れた光景となってしまい、怖いという感覚が麻痺してしまったというのが理由ではないかと思ったりもしますがいかがなものでしょうか。
死者が夜中に墓から抜け出して踊るというのは中世から民間伝承として広く語られていたところで、決してゲーテのオリジナルというわけではありませんが、ここでは死者の服をいたずら心で奪ってしまったのがきっかけで、よくできたホラー映画のような緊迫感ある物語となりました。死者たちのダンスといえば、マイケル・ジャクソンの「スリラー」を思い浮かべる方もおられるかも知れません。
冒頭の音楽は暗く沈んではおりますが、あまり怖いといういう感じはしません。
ところが音楽は死者の登場と共に少しずつ速くなってゆき、そして祝宴が始まるところから絶妙な快速のテンポで物語が動き出します。死者が塔の扉を叩く音や、塔を蜘蛛のようによじ登る様子、あるいは午前1時を告げる時の鐘の音など、実に見事に描写されています。
生理的な快感さえ呼び起こすレーヴェの音楽は、まさにバラードの名手の手になるもの。
4分近くかかる音楽を飽きさせず聴かせる腕前は見事です。

( 2010.08.06 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ