Der getreue Eckart Op.44-2 Drei Balladen |
親切なエッカルト 3つのバラード |
O wären wir weiter,o wär’ ich zu Haus! Sie kommen. Da kommt schon der nächtliche Graus; Sie sind’s die unholdigen Schwestern. Sie streifen heran und sie finden uns hier, Sie trinken das mühsam gehohlte das Bier, Und lassen nur leer uns die Krüge. So sprechen die Kinder und drücken sich schnell; Da zeigt sich vor ihnen ein alter Gesell: Nur stille,Kind! Kinderlein,stille! Die Hulden sie kommen von durstiger Jagd Und laßt ihr sie trinken wie’s jeder behagt, Dann sind sie euch hold die Unholden. Gesagt so geschehn! und da naht sich der Graus Und siehet so grau und so schattenhaft aus, Doch schlürft es und schlampft es auf’s beste. Das Bier ist verschwunden,die Krüge sind leer; Nun saus’t es und braus’t es,das wüthige Heer, In’s weite Gethal und Gebirge. Die Kinderlein ängstlich gen Hause so schnell, Gesellt sich zu ihnen der fromme Gesell: Ihr Püppchen,nur seyd mir nicht traurig. - Wir kriegen nun Schelten und Streich’ bis auf’s Blut. Nein keineswegs,alles geht herrlich und gut, Nur schweiget und horchet wie Mäuslein. Und der es euch anräth und der es befiehlt, Er ist es,der gern mit den Kindelein spielt, Der alte Getreue,der Eckart. Vom Wundermann hat man euch immer erzählt, Nur hat die Bestätigung jedem gefehlt, Die habt ihr nun köstlich in Händen. Sie kommen nach Hause,sie setzen den Krug Ein jedes den Aeltern bescheiden genug Und harren der Schläg’ und der Schelten. Doch siehe man kostet: ein herrliches Bier! Man trinkt in die Runde schon dreymal und vier Und noch nimmt der Krug nicht ein Ende. Das Wunder es dauert zum morgenden Tag. Doch fraget wer immer zu fragen vermag: Wie ist’s mit den Krügen ergangen? Die Mäuslein sie lächeln,im Stillen ergetzt; Sie stammeln und stottern und schwatzen zuletzt Und gleich sind vertrocknet die Krüge. Und wenn euch,ihr Kinder,mit treuem Gesicht Ein Vater,ein Lehrer,ein Alderman spricht, So horchet und folget ihm pünctlich! Und liegt auch das Zünglein in peinlicher Hut, Verplaudern ist schädlich,verschweigen ist gut; Dann füllt sich das Bier in den Krügen. |
ああ もっとあっちまで行ってたのならなあ ああおうちの中にいるんだったらなあ! やってくるよ、夜のおばけがもう来ちゃったんだよ あれがそうだよ、おばけの姉妹だよ こちらにふわふわやってきて ぼくたちを見つけ がんばって運んできたビールを飲んじゃって 空のジョッキだけを置いていくんだ そう子供たちは叫び、急いで互いに身を寄せ合った すると彼らの前にひとりのおじいさんが現れた 「静かに、子供たち! 子供たちよ 静かにせい! おばけたちは喉のかわく狩りから戻ってきたんじゃ だから好きなだけビールを飲ませてあげなさい そうすればきっと良いようにしてくれるぞ おばけたちは」 言った間もなくそうなった! おばけは近付いてきたのだ 灰色で影のような姿をして そしてガブガブ ゴクゴク飲むのだ まるで容赦なく ビールはなくなり ジョッキは空っぽ そうなってしまったら ざわざわごうごうと こわいおばけは 遠くの谷間や山に飛んでゆく こどもたちはおびえながら急いで家に向かう 彼らと一緒のやさしいおじいさん 「こどもたちや 悲しむんじゃないぞ」 「ぼくたち叱られちゃうんだよ 血が出るまでぶたれちゃうんだ」 「いや そうはならん、みんなうまく行くのじゃ ただし黙っているんじゃぞ 子ネズミのように」 さてここで君たちに教えてやるとしよう この人こそ 小さな子供と遊ぶのが大好きな 年老いた 親切なエッカルトなんだ この不思議なおじいさんのお話は君たちはいつも聞かされているだろうが ほんとうにいるかどうかは確かめられてはいなかった 今君たちはその大切な証拠を手にしているんだぞ 子供たちは家に戻り、ジョッキを置いた 親たちの目の前にそっと そして拳固や叱声を覚悟した ところがどうだ 味をご覧:旨いビールだ! 親たちはもう3回も回し飲み、そして四回目 それでもジョッキは空にならないのだ 不思議なことは翌日まで続いた けれどいつでも尋ねずにはいられないやつがいる このジョッキには一体何が起こったんだ? 子ネズミたちはにっこりと、ひそかに笑うだけ けれど最後にはもごもご ぼそぼそ ぺちゃくちゃとしゃべってしまう とたんにジョッキは空っぽだ だから君たち子供は、真面目な顔で お父さんや、先生や、年長者が何かおっしゃったときには しっかり聞いて言いつけを守るんだよ! 舌を動かさずにいるのがつらくても おしゃべりは良くない、黙っているのがいいんだ そうすればジョッキにビールはあふれるのだから |
くるくると変わる表情が実に面白く、歌物語の名手レーヴェの面目躍如といったところです。冒頭のひらひらと飛び回るようなピアノはこわいおばけの描写でしょう。激しくもどことなくユーモラスに子供たちを脅かす様子は遊園地のおばけ屋敷のイメージ。そこに優しい旋律でエッカルトが絡むのが前半の聴きものです。子供たちが家に戻った後半はリズムが8分の6拍子に変わり、飄々と不思議なビールジョッキのお話が語られます。最後は月並みなお説教になってしまうのが何と言いましょうか脱力してしまいますが、これも含めてゲーテ一流のユーモアなのでしょう。
もともとはボヘミアの伝説だったものを、ゲーテが1813年に旅行をしたときに聞いてこんなバラードにしたものなのだそうです。
getreueは正確に訳すと「忠実な」ですので、「忠実なエッカルト」というのが日本語での定訳のようですが、子供に「忠実」な伝説のおじいさんというのもちょっと違和感がありましたので、ここでは誤訳であることを承知で「親切なエッカルト」としてみました。それとこれは正しいのかどうか微妙なところなのですが、5節目のエッカルトが正体を明かすところと最終節のお説教のところは、いずれもビールを運んでいる子供たちにエッカルトが語っているのではなくて、このお話全体を語っている語り手が、このお話を聞いている子供たち(ビールを運んだ子供たちとは別)に語っているものと解釈してみました。その方がなんとなく間が抜けた感じで一層面白くなるような気がしますので。
( 2010.07.31 藤井宏行 )