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Der Schildwache Nachtlied    
  Des Knaben Wunderhorn
歩哨の夜の歌  
     子供の不思議な角笛

詩: 少年の不思議な角笛 (Des Knaben Wunderhorn,-) ドイツ
    Des Knaben Wunderhorn,Band 1 101 Der Schildwache Nachtlied

曲: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


“Ich kann und mag nicht fröhlich sein!
Wenn alle Leute schlafen!
So muß ich wachen!
Ja,wachen!
Muß traurig sein.!”

“Lieb’ Knabe,du mußt nicht traurig sein!
Will deiner warten
im Rosengarten!
Im grünen Klee!
Im grünen Klee!”

“Zum grünen Klee,da geh’ ich nicht!
Zum Waffengarten!
Voll Helleparten!
Bin ich gestellt!
Bin ich gestellt!”

“Stehst du im Feld,so helf' dir Gott!
An Gottes Segen
ist alles gelegen!
Wer's glauben tut,
Wer's glauben tut!”

“Wer's glauben tut,ist weit davon!
Er ist ein König!
Er ist ein Kaiser!
Ein Kaiser!
Er führt den Krieg!”

Halt! Wer da? Rund'!
Bleib' mir vom Leib!

Wer sang es hier? Wer sang zur Stund'?
Verlorne Feldwacht
sang es um Mitternacht!
Mitternacht! Mitternacht!
Feldwacht!

俺は全然面白くねえ 面白いわけがねえ!
仲間がみんな眠ってるっていうのに!
こうして俺は起きてなきゃなんねえんだ!
そうだ 起きてなきゃな!
情けねえ限りだぜ!

愛しい坊や、落ち込まなくたっていいのよ!
あんたを待っててあげるわ
バラの庭の中!
緑のクローバーの中で!
緑のクローバーの中でね!

緑のクローバーのところにゃ、俺は行けねえ!
この武器の庭!
いっぱいの槍の花のところに!
俺は立たされてるからな!
俺は立たされてるからな!

あんたが戦場にいるのなら、神様のご加護がありますように!
神様のお恵みは
すべてに満ちているんだから
それを信じる者にとっては
それを信じる者にとってはね!

信じてるやつは、遠くにいるんだ!
そいつぁ王様さ!
そいつぁ皇帝さ!
皇帝なのさ!
そいつが戦争を指揮してるんだ!

待て、そこに誰がいる?巡回だ!
離れろ 俺の体から!

誰がここで歌ってる?誰が歌ってるんだこんな時間に?
ヤケになってる歩哨の兵士が
そいつを歌ってるのさ 真夜中に 
真夜中に!真夜中に! 
歩哨が!


「少年の不思議な角笛」につけた歌曲集は。オーケストラの伴奏で演奏されることが多いということもあり、また同時期に作曲された交響曲第2番〜第5番までとの関係が深いということもあり、マーラーの歌曲作品の中では比較的良く知られたものとなっています。一曲一曲にテーマ上の繋がりはなく、また女声向きのもの、男声向きのもの、及びこの曲のようにデュエットとなっているものとスタイルが多彩なので一部抜粋で取り上げられたり、あるいは全曲でも曲順は自由に入れ替えて演奏されたりしていますのでなかなか全体像が掴み難い歌曲集でもあります。

第1曲目は夜寝ずの番をしている兵士と、それを誘惑する(恐らくは兵士の妄想の中の)女との会話、マーラーお得意の軍楽の響きも織り交ぜながら力強く不満をぶつける兵士と、妖艶にそれをなだめる女との少々チグハグなやり取りです、
「待て 誰だ」の叫びで始まる最後の一節は少々唐突な感がありますが、ここは「少年の魔法の角笛」を編纂するときに、編者のひとりアルニムが書き加えたのだそうです。なお、その原詩では歌ではその次の行に来ている「俺の体から離れろ」の部分が詩の一番最後に来ていて、この節全体が兵士たちの会話になっていますが、マーラーはこれを前に持ってきて、「誰が歌っているのか」の部分以降は第3者のつぶやきに変えました。男女のデュエットの形で歌われる時にはこの最後の部分は女声で歌われます。また邦訳の中にはこのVerlorne Feldwachtを「行方不明の兵士」、あるいは更に踏み込んで「死んでしまった兵士」として怪談にしてしまっているものもありますが、これはやはり生きている兵士の妄想でしょう。戦争を推し進めるお偉いさん達に対する怒りもにじませながら、ほんのりとユーモアも漂わせています。
(2010.07.03)  訳詞とコメント改訂 2012.08.13

リサイタルでお使い頂くに当たり、歌われるピアノ伴奏版が新マーラー全集ということなので、それに準拠した対訳に直しました。また「さすらう若人の歌」や「リュッケルト歌曲集」にならって、歌詞の繰り返しもできるだけ忠実になぞり、目で追いやすいように致しました。この曲はそれほど違いはありませんが、オーケストラ伴奏版や他のピアノ伴奏版と歌詞が大きく異なるケースがございます。気が付いたところはこのコメントで指摘して置こうと思います。

( 2012.08.31 藤井宏行 )


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