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Der genügsame Liebhaber    
  Brettl-Lieder
欲のない愛人  
     ブレットルリーダー

詩: ザラス (Hugo Salus,1866-1929) チェコ
      

曲: シェーンベルク,アルノルト (Arnold Schonberg,1874-1951) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Meine Freundin hat eine schwarze Katze
Mit weichem knisterndem Sammetfell,
Und ich,ich hab' eine blitzblanke Glatze,
Blitzblank und glatt und silberhell.

Meine Freundin gehört zu den üppigen Frauen,
Sie liegt auf dem Divan das ganze Jahr,
Beschäftigt das Fell ihrer Katze zu krauen,
Mein Gott ihr behagt halt das sammtweiche Haar.

Und komm' ich am Abend die Freundin besuchen,
So liegt die Mieze im Schoße bei ihr,
Und nascht mit ihr von dem Honigkuchen
Und schauert,wenn ich leise ihr Haar berühr.

Und will ich mal zärtlich tun mit dem Schatze,
Und daß sie mir auch einmal “Eitschi” macht,
Dann stülp' ich die Katze auf meine Glatze,
Dann streichelt die Freundin die Katze und lacht.

オレのカノジョは黒ネコを飼ってる
やわらかで さわさわと音がするヴィロードの毛をしたやつを
そしてオレはと言やあ、ピッカピカのハゲ頭
ピッカピカでつるつる おまけに銀の輝きだぜ

おれのカノジョはグラマーなタイプ
年中ソファに寝そべって
ネコの毛をなでるのに忙しい
ちきしょうめ、カノジョのお気に入りはやわらかいヴィロードの毛なんだ

オレが夜にカノジョのとこへとたずねていくと
カノジョのひざの上に寝そべってんのはあのネコの野郎
そいつと一緒にハニーケーキを食ってやがる
そんで身震いなんかしやがる、オレがそっとさわったりなんかすると

でオレが恋人と一発ナニがしたくなって
オレも「ナデナデ」してくれるかと
オレはネコをハゲ頭に乗せるのさ
するとカノジョはネコをなでて そして笑うんだ


歌詞は何とコメントして良いか困ってしまう内容ですが(けっして私の訳だけの問題ではございません)、メロディは実にしゃれたワルツ。さすがシェーンベルクとも言える近代的な響きにも満ちてなかなか聴き応えのある傑作だと思います。

保守的なウィーンの音楽界で、相当にとんがった活動をしたために政治的にも経済的にもいたたまれなくなったシェーンベルクは結婚を機に1901年ベルリンに移住し、生計を立てるためもあって当地のキャバレー「ユーバーブレットル」の座付作曲家となります。そこで書かれたのがこの8曲のようですが、当のキャバレーでは演奏されたという記録はほとんどなく、彼がこの仕事を続けたのもわずか半年、実際にこれらの楽譜が発見されたのは彼の死後、遺品の中からだといいます。1975年にこれらの曲は出版されました。
「キャバレー」とはいいつつも、「あなただけが 生きがいなの お願い お願い 捨てないで(by青島幸男)」と男の欲望を全開にさせる日本のそれとはちょっと違って、文化人が集まるサロンのようなところであったようです。これらキャバレーソングの中にも、おやっと思わされるような詩人の名を見つけることができます。

( 2010.07.03 藤井宏行 )


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