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Le Jazz   H.168  
 
ル・ジャズ  
    

詩: (,-) 
      

曲: マルティヌー (Bohuslav Martinů,1890-1959) チェコ   歌詞言語:


歌詞はありません


チェコ生まれながらフランスで活躍し、独自のリズム感とフランス風のエスプリに溢れた作品を文字通り「量産」したマルティヌーは私のお気に入りの作曲家のひとりです。
(同じようにチェコ出身ながらパリで活躍し、アールヌーボーの代表的画家とされているアルフォンス・ミュシャと通じるものがあります)
彼の音楽は交響曲からオペラ、室内楽にピアノ曲まで、プーランクの持つ伸びやかな旋律に、ルーセルの持つクドいリズムが混じり合ったような独特の味わいで、今までに手を出して聴いたものは全て気に入っているのですが、残念ながら本格的な歌曲というのはまだ見付けていません。
(彼の故郷チェコの民謡の編曲のようなのならあるようですが)
そこで今回は思い切って、異色中の異色作品を取り上げてみることにしました。
いかめしいオーケストラの序奏が高鳴ったかと思うと、サックスとバンジョーでどこか懐かしいキッチュなメロディが始まります(パリのデューク・エリントンといったおもむき)。プーランクのバレエ音楽「牝鹿」のような合いの手が時折入りながら、バンジョーが大活躍しつつ音楽が展開していくと、突如無愛想なヴォーカルが乱入してきてスキャットを歌い始め、あれあれという間に唐突に音楽は終わってしまいます。
初めて聴いた時から「なんじゃこりゃ」というインパクトに満ちた忘れがたい音楽でありました(でも歌曲というにはちょっと無理が...)。ジャズと銘打ちながら、無国籍な怪しさがなんとも言えない怪作といえましょう。
スプラフォンから出ているマルティヌーの管弦楽・室内楽作品集「ジャズとスポーツに触発された作品集」というCDの中でも1、2を争う強烈な曲でした。ヴォストラク指揮のプラハ交響楽団が異常な熱演を繰り広げるなか、何がそんなに楽しくないのかひたすら平板にスキャットを歌うヴォーカル(リュヴォミア・パーネク)との好対照が忘れられない印象を与えてくれます。

( 1999.07.11 藤井宏行 )


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