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Zu Straßburg auf der Schanz'    
  Lieder und Gesänge aus der Jugendzeit
シュトラスブルクの砦の上  
     若き日の歌 第三集

詩: 少年の不思議な角笛 (Des Knaben Wunderhorn,-) ドイツ
    Des Knaben Wunderhorn,Band 1 71 Der Schweizer

曲: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Zu Straßburg auf der Schanz',
Da ging mein Trauern an;
Das Alphorn hört' ich drüben wohl anstimmen,
Ins Vaterland mußt' ich hinüberschwimmen,
Das ging ja nicht an!

Ein' Stunde in der Nacht
Sie haben mich gebracht;
Sie führten mich gleich vor des Hauptmanns Haus,
Ach Gott! sie fischten mich im Strome aus!
Mit mir ist's aus!

Frühmorgens um zehn Uhr
Stellt man mich vor's Regiment;
Ich soll da bitten um Pardon,
Und ich bekomm doch meinen Lohn,
Das weiß ich schon!

Ihr Brüder allzumal,
Heut' seht ihr mich zum letztenmal;
Der Hirtenbub' ist nur schuld daran,
Das Alphorn hat mir's angetan,
Das klag' ich an.

シュトラスブルクの砦の上
わが悲しみはあふれ出る
アルペンホルンがとても美しく歌うのが私には聞こえる
祖国に戻るには私は泳いで渡らねばならぬが
それはもう無理なのだ!

夜のとある時間
やつらは私を捕らえて
私を隊長の屋敷へと引き立てていった
ああ神よ!やつらは私を川から釣り上げたのだ
私はもう駄目だ!

明日の朝10時
私は連隊の前に引きずり出される
私はそこで赦しを乞わねばならぬだろう
そして私はその報いを受けるつもりだ
それはよく分かっている!

おまえたち兄弟よ みんないっせいに
今日は私の最後の時を見るがいい
あの羊飼いの少年だけがこの責めを負う
あのアルペンホルンが私には効いたのだ
そのことは決して許せはしない


山がちでたくさんの人を養えなかったかつてのスイスからは、出稼ぎ仕事として傭兵になるというのがけっこう良くあったようです。現在でもローマのバチカン宮殿の衛兵はスイスの傭兵部隊であるのはとても良く知られていますね。
そんなスイス出身の兵士のひとりがここでは主人公です。原詩のタイトルも「Der Schweizer スイス人(スイス兵)」、この詩だけでは何のことやら良く分からないシチュエーションですが、恐らくこの兵士、要塞の外から聞こえてきたアルペンホルンの音に、故郷に帰りたくてたまらなくなり、要塞の堀を泳いで渡って部隊を脱走しようとしたということなのでしょう。
軍隊においては脱走は重罪です。マーラーは歌詞からは省いてしまいましたけれども、この詩にはこのあと、次のような2節が続きます。

  お前たち兄弟、三人とも
  頼むから私をまっすぐ撃ってくれ
  私の若い命を惜しんだりするな
  撃ってくれ、血が飛び散るほどに
  それが私の願いだ

  おお天にまします王、主よ!
  御身は私の魂を運び去ってください
  御身と共に天国へと運び
  御身のそばに永遠に置いてください
  そして私を忘れないでください!

  Ihr Brüder alle drei,
  Was ich euch bitt,erschießt mich gleich;
  Verschont mein junges Leben nicht,
  Schießt zu,daß das Blut rausspritzt,
  Das bitt ich euch.

  O Himmelskönig,Herr!
  Nimm du meine arme Seele dahin,
  Nimm sie zu dir in den Himmel ein,
  Laß sie ewig bei dir sein
  Und vergiß nicht mein!

マーラーのつけたしんみりした音楽とは相性の悪そうなエンディングですので、良い歌を書くためならいくらでもテキストに手を加えている彼によってバッサリと切り捨てられてしまいました。おかげで何となく情けなささえ漂う最後の言葉で詩は終わってしまいドラマチックさは大いに減退してしまいたしたが。
ピアノ伴奏にほのかに聴こえるアルペンホルンの音がなんとも寂しげです。

( 2010.06.13 藤井宏行 )


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