Die Seele des Weines Der Wein,Konzertarie für Soprano und Orchester |
ワインの魂 演奏会用アリア 「ワイン」 |
Des weines geist begann im fass zu singen: Mensch - teurer ausgestossener - dir soll Durch meinen engen kerker durch erklingen Ein lied von licht und bruderliebe voll. Ich weiss: am sengendheissen bergeshange Bei schweiss und mühe nur gedeih ich recht Da meine seele ich nur so empfange Doch bin ich niemals undankbar und schlecht. Und dies bereitet mir die grösste labe Wenn eines arbeit-matten mund mich hält Sein heisser schlund wird mir zum kühlen grabe Das mehr als kalte keller mir gefällt. Hörst du den sonntagsang aus frohem schwarme? Nun kehrt die hoffnung prickelnd in mich ein: Du stülpst die ärmel - stützest beide arme Du wirst mich preisen und zufrieden sein. Ich mache deines weibes augen heiter Und deinem sohne leih ich frische kraft Ich bin für diesen zarten lebensstreiter Das öl das fechtern die gewandheit schafft. Und du erhältst von diesem pflanzenseime Den Gott - der ewige sämann - niedergiesst Damit in deiner brust die dichtkunst keime Die wie ein seltner baum zum himmel spriesst. |
ワインの精が樽の中でこう歌い始めた 人間よ - かけがえなきはみ出し者よ- お前に 私の狭い牢獄をすり抜けて響かせてやろう 光と兄弟愛に満ち溢れた歌を 私は知っている:あの焼けるように熱い山の斜面で 労苦と汗にまみれることで私は育つのだと そうすることでのみ 私は魂を得るのだと とはいえ 私は恩知らずの悪党ではない そして私に最大の歓喜をもたらすのは ひとりの仕事に疲れた者の口に触れるときだ 彼の熱い喉が私には涼しい墓場なのだ そこが冷たいワインセラーなどよりも私には遥かに好ましい 陽気な群集の日曜日の歌が聞こえるか? 今や希望が泡立ちながら私の中で休憩している。 お前は袖をまくるがいい! 両腕を立てて お前は私を褒め称えれば満ちたりるのだ 私はお前の妻の瞳を輝かせよう お前の息子には新鮮な力を与えよう 私はこのか弱き人生の闘士のために 剣の機敏さを与える油にもなろう そしてお前はこの植物の種子から受け取るのだ 神-永遠なる種蒔き人-が地上に蒔く種から そうすることでお前の胸の中で詩が湧き出すのだ 珍しい木のように天に向かって芽を吹く詩が |
1929年、ソプラノ歌手ルツェルナ・ヘルリンガーの依頼を受けて書かれた管弦楽伴奏による「現代の」演奏会用アリアということで、モーツアルトの時代には良く取り上げられていたこの演奏会用アリアというスタイルを、当時の前衛的な手法で再構築したらどうなるだろうかといった試みでしょうか。たいへん鮮烈な、しかし不思議な美しさをたたえた作品ができあがりました。ボードレールの有名な詩集「悪の華」より、その後半に5篇の詩を集めているサブセクション「ワイン」があるのですが、そこから「人殺しの酒」と「屑屋の詩」のふたつを除いた(これらはたぶん当時の感覚ではあまりに非道徳的な内容だったのでしょう)残りの3篇にメロディを付けています。作曲の際は「抒情組曲」のときと同じように、新ウイーン楽派が好んで取り上げている詩人シュテファン・ゲオルゲのドイツ語訳が用いられていますが、オリジナルのフランス語の詞で歌われることもあるようです。
3つの詩は切れ目なく演奏されますが、それぞれの詩の情感に応じて音楽にはかなり起伏があり、雄弁な管弦楽もあいまってなかなかの聴きごたえです。1分以上もある長い前奏のあと歌いだされる最初の詩の部分ははじめの部分こそゆったりと静かですが、やがてタンゴのリズムに乗せて(酒の力に酔わされるように)「陽気な群衆の...」のところから彩りが濃くなり、そして力強く盛り上がったのちに
フランス語の原詩と訳も作ってみましたのでよろしければゲオルゲの訳と比べてみてください。
L'âme du vin
ある夜、ワインの魂がボトルの中で歌を歌った
人間よ、お前たちにわれは捧げよう、おお愛しき廃嫡者どもよ
わがガラスの牢獄と赤き密蝋の中より
輝きと兄弟愛に満ち溢れた歌を
われはどれだけ大切なのかを知っている、炎の丘の上で
苦痛を覚え、汗を流し、太陽に焼かれることが
わが命を生み出し、魂を作り上げるためには
だがわれは恩知らずにも邪悪にもなるつもりはない
なぜならわれは絶大な喜びを感じるからだ われが
仕事に疲れ果てた男の喉を流れ落ちるときには
そしてその男の熱い胸は心地よい墓場なのだ
われの在った冷たいワインセラーよりもずっと
お前たちには聞こえるか 日曜日の鼻歌のこだまが
そしてわが脈打つ胸の中でさえずっている希望が?
両肘をテーブルにつき 両袖を捲りあげて
お前たちはわれを讃え そして幸せになるのだ
われは夢見るお前の妻の瞳を輝かせよう
お前の息子には力と血色を戻してやろう
そして人生の弱弱しい競技者のために
格闘者の筋肉を強化するオイルとなろう
お前の中にわれは落ちる、この美味なる植物
永遠の蒔き主によって蒔かれた貴重な種は
われらの愛情より詩が生まれ
神のもとへと昇ってゆくように 妙なる一輪の花として!
Un soir,l'âme du vin chantait dans les bouteilles:
“Homme,vers toi je pousse,ô cher déshérité,
Sous ma prison de verre et mes cires vermeilles,
Un chant plein de lumière et de fraternité!
“Je sais combien il faut,sur la colline en flamme,
De peine,de sueur et de soleil cuisant
Pour engendrer ma vie et pour me donner l'âme;
Mais je ne serai point ingrat ni malfaisant,
“Car j'éprouve une joie immense quand je tombe
Dans le gosier d'un homme usé par ses travaux,
Et sa chaude poitrine est une douce tombe
Où je me plais bien mieux que dans mes froids caveaux.
“Entends-tu retentir les refrains des dimanches
Et l'espoir qui gazouille en mon sein palpitant?
Les coudes sur la table et retroussant tes manches,
Tu me glorifieras et tu seras content;
“J'allumerai les yeux de ta femme ravie;
A ton fils je rendrai sa force et ses couleurs
Et serai pour ce frêle athlète de la vie
L'huile qui raffermit les muscles des lutteurs.
“En toi je tomberai,végétale ambroisie,
Grain précieux jeté par l'éternel Semeur,
Pour que de notre amour naisse la poésie
Qui jaillira vers Dieu comme une rare fleur! “
( 2010.05.15 藤井宏行 )