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Wiegenlied   Op.98-2 D 498  
 
子守歌  
    

詩: 不詳 (Unknown,-) 
      

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Schlafe,schlafe,holder,süßer Knabe,
Leise wiegt dich deiner Mutter Hand;
Sanfte Ruhe,milde Labe
Bringt dir schwebend dieses Wiegenband.

Schlafe,schlafe in dem süßen Grabe,
Noch beschützt dich deiner Mutter Arm,
Alle Wünsche,alle Habe
Faßt sie lieben,alle liebwarm.

Schlafe,schlafe in der Flaumen Schoße,
Noch umtönt dich lauter Liebeston,
Eine Lilie,eine Rose,
Nach dem Schlafe werd' sie dir zum Lohn.

お眠り、お眠り、愛しのかわいい坊や
やさしくお前を揺らすのは お前のお母さんの手です
穏やかな安らぎを、静かな憩いを
ゆれながらお前に与えてくれるのです この揺りかごは

お眠り、お眠り、このすてきなお墓の中で
今もお前を守っているのは お前のお母さんの腕です
すべての願いを、すべての持ち物を
お前は愛らしく手にしているのです、愛の暖かさに満ちて

お眠り、お眠り、ふわふわな膝の上で
今もお前を包んでいるのは大きな愛の響きです
一本のユリが、一本のバラが
眠ったあとで お前へのごほうびとなるでしょう


あまりにも有名なシューベルトの歌曲ですが、調べてみると意外に有名なクラシック歌手たちの「シューベルト歌曲集」といった録音に収録されていないことが多いようで不思議です。単独で「世界の子守歌」なんてCDに収録されているものはともかく、「歌曲集」録音の中に私が見つけることのできたのはアメリンクとシュライアーのものくらいでした。もっとも往年の歌手たちはそれなりに良く録音していたようで、SP復刻盤などでは比較的耳にできることが多いです。
まあ私も個人的には、溜息ものの美しいメロディの歌曲をたくさん書いたシューベルトにしてはいまひとつ印象が弱い曲と感じたりすることもありますので、CDであれコンサートであれ時間に制約があるところではより一層素晴らしい曲をもっと取り上げようということで省かれてしまうところもあるのでしょう。歌手の方たちに直接聞いたことがありませんので単なる邪推ですが。
日本では内藤濯(あろう1883-1977)の訳詞(眠れ 眠れ 母の胸に)によって広く歌われることが多いようですが、古くは「菩提樹」などの訳詞でも良く知られている近藤朔風による訳詞もあります。こちらは著作権が切れていますので下記にご紹介しましょう。

    美(うま)し夢
          詞:近藤朔風

  眠れ 眠れ 可愛(めぐ)し緑子(わくご)
  母君に 抱(いだ)かれつ
  ここちよき  歌声に
  むすばずや  美し夢

  眠れ 眠れ 慈愛(めぐみ)あつき
  母君の 袖のうち
  夜もすがら 月さえて
  汝(な)が夢を 護りなん

  眠れ 眠れ 疾く眠りて
  朝まだき 覚て見よ
  麗しき 百合の花
  微笑まん 枕もと


ドイツ語の原詞はかつてはマチアス・クラウディウスの作詞と言われていたこともあったようですが、現在は作詞者不祥となっています。けっこう言葉が難しく、あんまりうまく訳せておりませんがご容赦下さい。特に解釈に困ったのが2節目のFaßt sie lieben(彼女?が愛情を持って掴む)このSieが何を指しているのかが分かりませんでした。多くの訳詞ではこれを母親だと解釈して「母は愛情に満ちて掴んでいる」といった訳にしていますが、そうするとこの歌を歌っているのはこの子の母親ではないことになります。つまり睦まじく寄り添い合う母と子を横から眺めている第3者が歌っているということです。こういう詩の読み方もできなくはないのですが、やはりこれはお母さん自らが歌っていると私は解釈したいところ。その意味ではこのSieは上のArm(腕)とて「この(私の)腕が掴む」としたいところですが、残念なことにドイツ語のArmは男性名詞ですのでSieでは受けることができません。
面白いのはいくつかの訳でこのsieを二人称「あなた」と解釈していることです。他の部分がdiner・dir・dichとdu(お前)を使っている中で唐突にここだけ丁寧になるのも変ですが、私にはこれが一番良い解釈のように思えましたので、「お前は愛らしく手にしているのです」という解釈にしてみました。
あと3節目のSchoßeですが、文語では「懐」という意味もあり迷ったところです。
そのあとのLiebeston(愛の音)というのが母親の心臓の音のように解釈できることもあって、よほど「胸」としようかと思いましたが、Flaumen(綿毛の)という形容詞とどうしても繋がりが悪いので、普通に使われる「膝」としました。

1816年の作曲で、シューベルトはまだ19歳でした。もっともこの頃に既にいくつもの傑作を書いておりますので、彼の才能にこれで驚くほどのことはないのかも知れないですけれども...

( 2010.02.06 藤井宏行 )


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