Ein deutsches Kriegslied K.539 |
ドイツ軍歌 |
Ich möchte wohl der Kaiser sein! Den Orient wollt ich erschüttern; Die Muselmänner müssten zittern, Konstantinopel wäre mein! Ich möchte wohl der Kaiser sein! Ich möchte wohl der Kaiser sein! Athen und Sparta sollten werden Wie Rom die Königin der Erden, das Alte sollte sich erneu'n! Ich möchte wohl der Kaiser sein! Ich möchte wohl der Kaiser sein! Die besten Dichter wollt ich dingen, Der Helden Taten zu besingen, Die goldnen Zeiten führt ich ein! Ich möchte wohl der Kaiser sein! Ich möchte wohl der Kaiser sein! Weil aber Joseph meinen Willen Bei seinem Leben will erfüllen, Und sich darauf die Weisen freu'n, so mag er immer Kaiser sein! |
俺は皇帝になりてえ! オリエントを蹂躙して イスラム教徒どもを震え上がらすんだ コンスタンチノープルは俺のもんだ! 俺は皇帝になりてえ 俺は皇帝になりてえ! アテネとスパルタを変えるのさ ローマみてえな地上の女王に 古びたものを新しくするのさ 俺は皇帝になりてえ 俺は皇帝になりてえ! 最高の詩人を雇って 英雄たちの行為を歌わせるんだ 黄金の時を俺は生み出すんだ 俺は皇帝になりてえ 俺は皇帝になりてえ! けどヨーゼフが俺の気持ちを 自分の命をかけて実現しようとして そうすることを喜んでいるのなら やつがいつまでも皇帝でいるがいいさ |
ユニークな歌詞の歌です。1788年の作品で、「ヨーゼフ2世のトルコ出征に寄せる愛国歌」という副題が付けられています。
ヨーゼフ2世(1741-1790)といえば18世紀の啓蒙君主として、モーツアルトとも因縁浅からぬ人であったのはご承知の通りです。
この年の2月にオーストリアはイスラムの大国オスマン・トルコと戦争をはじめ、3月には皇帝自身も戦場に赴いたのだそうで、ちょうどその頃の作品なのでしょう。もっとも詩の方はそれよりもだいぶ前に書かれたもので、Emily Ezstのリートのページによれば、Johann Holzerというひとの書いた別の曲がほぼ10年前の1779年に出版された、とあります。かつての強大な隣国としてこのトルコからうける圧迫感は大変なものがあったのでしょう。ただこの当時はさしもの大帝国も衰えを見せており、オーストリアもだいぶ優位に戦えたのだそうです。そんなところが音楽の明るさやユーモアにもつながってきているのだと思います。
もともとは管弦楽伴奏つきのバス歌手のアリアだったようですが、現在ではほとんど取り上げられることが稀になっているからでしょうか。私もオリジナルの形での演奏を聴いたことはありません。なぜかソプラノのシュワルツコップがジェラルド・ムーアのピアノ伴奏で録音したものが、EMIにある彼女のソングブック第2集に収録されているのを聴くことができます。聴いてみて驚いたのは伴奏の絢爛豪華な響き。メロディラインといいかなりトルコの軍楽をまねたような音楽はたいへんに面白いです。モーツアルトには有名な「トルコ行進曲」をはじめとしてオペラ「後宮よりの誘拐」やヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」など、このトルコの軍楽の雰囲気を濃厚に漂わせる音楽がいくつかありますが、この曲もその系譜につらなるでしょうか。そのトルコと戦うドイツの軍歌、というのがなんとも皮肉なところではありますけれども。
( 2010.01.09 藤井宏行 )