Black is the colour Folksongs |
黒は何の色...(USA) フォークソングズ |
詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
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黒、黒、黒は私の最愛の人の髪の色 彼のくちびるは美しいバラのよう 甘い微笑みと優しい手 私はあの人が立っている足元の草まで好き 私はあの人が好き。彼もそれを知っている 私はあの人が立っている足元の草まで好き もしあの人がこの世からいなくなったら その時は私もいなくなる時 |
つい先だって亡くなったイタリア出身の現代作曲家ルチアーノ・ベリオが1964年に奥さんで前衛音楽の同志とも言える七色の声の持ち主キャシー・バーベリアンのために纏めたアンソロジーです。
彼の声楽曲というとまず挙げられるのがやはり彼女のために書かれた強烈な「セクエンツァV」で、これはこれで人間の声の表現の極限が聴けて面白いのですが、やはりちょっと聴く人を選ぶところがあります。
その点この曲は、民謡をアレンジしたものなので(一部ベリオが作曲したものもあるようですが)、その美しさと共に忘れがたい魅力を醸し出しています。
ベリオの出身国イタリアの歌が多いですが、その中にはシチリアやサルディニアなどの離れ島のものがあり、アルメニアなどの珍しい中央アジアのエキゾチックな歌もあり、そしてカントルーブの編曲で有名なフランス、オーヴェルニュの歌からの引用もありと多彩です。
伴奏に7つの楽器を用いていて、その組み合わせからくる色彩感も聴き物です。
オーベルニュの歌のカントルーブ編曲のものと聴き比べて見るのも面白いのではないかと。かなり印象が違います。
入手が容易なのは、メゾソプラノのヴァン・ネスがシャイー/アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団と録音したデッカ盤だと思います。これはこれでしっとりした歌が魅力なのですが、ここはひとつ初演者のキャシー・バーベリアンの録音(RCA)を取りましょう。
なぜならこの歌曲集自体が、ベリオのキャシーに対する想いが詰まったものであるからです。「理想のひと」「踊り」は1949年、まだキャシーが学生の時に書かれたもの、二人の熱愛時代の思い出です。
そして他の曲も、彼女にかかるとこの他には有り得ないのでは?と思えるような絶妙な解釈で歌われます。ベルカントあり、アイドル声あり、土臭い地声もありとたいへんに多彩で本当に見事です。
(2003.05.31) ルチアーノ・ベリオの追悼に
原詩を付けられそうなものについて訳の見直しと共に大改訂を施しましたので、纏めていた曲の解説を各曲ごとに分けることとしました。第1・2曲は残念ながら著作権が生きている可能性がありますので原詩の掲載は控えさせて頂きます。アメリカの民謡研究家にしてシンガーソングライターのJohn Jacob Niles (1892-1980)が書いたとも、あるいは彼が民謡を編曲したとも言われているこの曲、英米のいろいろなサイトを調べてみるともう少し長い歌で、「足元の草」ではなくて「足元の地面」だったりと微妙な違いがあります。どうも大本はスコットランドの民謡のようで(歌詞にあるクライド川というのがグラスゴーあたりを流れる川のようなので)、それをアメリカに移住したスコットランド移民たちがアパラチア山脈の麓で歌い継いできたというのが真相のようです。ナイルズ自身も「元からあった歌詞に自分がオリジナルのメロディを付けた」と語っていますので、恐らくオリジナルに近いと思われる歌詞(スコットランド民謡の歌詞を紹介しているサイトよりお借りしました)は著作権的には問題ないと思われますので、それを下にご紹介して訳もつけておきましょう。ネットで検索していても色々なヴァリエーションがあるようですのでそのうちのひとつです。 音楽はゆったりとしたバラード。弦楽器との絡みが美しいです。
Black is the color of my true love's hair.
His lips are like some roses fair
He has the sweetest smile and the gentlest hands
I love the ground whereon he stands.
I love my love and well he knows,
I love the ground whereon he goes,
And I wish the day it soon will come
That he and I will be as one.
I'll go to the Clyde and I'll mourn and weep,
For satisfied I'll ne'er sleep.
I'll write him a letter,just a few short lines,
I'll suffer death ten thousand times.
黒は私が本当に愛してる人の髪の色
彼のくちびるはきれいなバラのよう
最高にやさしい微笑みと最高に優しい手
私はあの人が立っている足元の地面まで好き
私はあの人が好き。彼もそれを知っている
私はあの人が立っている足元の地面まで好き
その日がすぐにやってきてくれるといいなあ
彼と私がひとつになれる日が
私はクライド川に行きましょう そして嘆き、泣きましょう
満足して眠れなくなるでしょう
私はあの人に手紙を書きます ほんの数行の
私は何千倍もの死の苦しみを味わうでしょう
( 2008.09.30 藤井宏行 )