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Gott erhalte Franz,den Kaiser   XXVIa no.43  
 
神よ救いたまえ 皇帝フランツを  
    

詩: ハシュカ (Lorenz Leopold Haschka,1749-1827) オーストリア
      

曲: ハイドン (Joseph Haydn,1732-1809) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Gott erhalte Franz,den Kaiser,
Unsern guten Kaiser Franz!
Lange lebe Franz,der Kaiser,
In des Glückes hellstem Glanz!
Ihm erblühen Lorbeerreiser,
Wo er geht,zum Ehrenkranz!
Gott erhalte Franz,den Kaiser,
Unsern guten Kaiser Franz!

Laß von seiner Fahne Spitzen
Strahlen Sieg und Fruchtbarkeit!
Laß in seinem Rate Sitzen
Weisheit,Klugheit,Redlichkeit;
Und mit Seiner Hoheit Blitzen
Schalten nur Gerechtigkeit!
Gott erhalte Franz,den Kaiser,
Unsern guten Kaiser Franz!

Ströme deiner Gaben Fülle
Über ihn,sein Haus und Reich!
Brich der Bosheit Macht,enthülle
Jeden Schelm- und Bubenstreich!
Dein Gesetz sei stets sein Wille,
Dieser uns Gesetzen gleich.
Gott erhalte Franz,den Kaiser,
Unsern guten Kaiser Franz!

Froh erleb' er seiner Lande,
Seiner Völker höchsten Flor!
Seh' sie,Eins durch Bruderbande,
Ragen allen andern vor!
Und vernehm' noch an dem Rande
Später Gruft der Endkel Chor.
Gott erhalte Franz,den Kaiser,
Unsern guten Kaiser Franz!

神よ救いたまえ 皇帝フランツを
われらが良きフランツ皇帝を
とわに生きよフランツ、皇帝閣下
明るい光輝の幸福の中で!
彼のために月桂樹の花が咲き
どこへ行こうとも、花の冠となれ!
神よ救いたまえ 皇帝フランツを
われらが良きフランツ皇帝を

彼の旗の先端より
勝利と豊穣を輝かせよう
彼の議会に参集させよう
英知と思慮と至誠とを
そして彼の威厳を閃かせ
ただ正義のみを実現するのだ
神よ救いたまえ 皇帝フランツを
われらが良きフランツ皇帝を

御身の贈り物の豊穣さを注ぎたまえ
彼の上に、宮殿にそして帝国に
悪しき者共の力を打ち破り、明かすのだ
おのおのの悪しきたくらみを
御身の法は常に彼の意志となり
それらはわれらの法と同じものとなる
神よ救いたまえ 皇帝フランツを
われらが良きフランツ皇帝を

歓喜を経験させよ 彼の国土に
彼の臣民に至高の繁栄あれ!
かれらを見よ、友愛の絆で
すべての他国民の前に立てり!
そしてなおも耳にするは
のちの墓所にての子孫たちの賛美の歌声
神よ救いたまえ 皇帝フランツを
われらが良きフランツ皇帝を


イギリスの国歌”God Save the King (Queen)”に負けない国歌をオーストリア帝国(当時は神聖ローマ帝国)も持とうということで書かれた作品ですが、作曲者自身がこのイギリス国歌に感激して時の宮廷に作曲を申し出たという説と、宮廷の方が先に国歌を計画し、ハイドンに作曲を委嘱したという説の両方がネット上ではあり、どちらが正しいのかは調べ切れませんでした。どちらかというと後者の方が正しいように私には思われます。1797年2月の皇帝フランツ2世の誕生日に初演されたとのことですが、同年ハイドンはこのメロディをもとにした変奏曲を第二楽章に持つ弦楽4重奏曲を書いております。
当時の宮廷詩人ハシュカの書いた歌詞といいハイドンの書いたメロディといい、このイギリス国歌を意識しすぎるくらい意識しているのはビンビンに感じられますが、格調高く美しいメロディはやはり印象深く、二番煎じとは言いながらも歴史に残る名曲となりました。ただ失敗だったのは歌詞に皇帝の個人名を入れていまったこと。おかげでイギリスでは歌詞をいじることなくずっと使いまわしができたのが(もちろん女王のときはKingからQueenへの変更は必要ですが)、こちらは皇帝が代替わりする度に歌詞を書き換えねばいけない羽目になってしまいました。
ということで、神聖ローマ帝国、およびそのあとを引き継いだオーストリア帝国の歴代皇帝の分だけ歌詞があり、どれがどれやらわけのわからない状況ではありますが、ここではオリジナルとおぼしきものを探し出して訳をつけてみました。多民族国家だったオーストリア帝国のこと、この歌詞にはハンガリー語やチェコ語、セルビア語などの版もあるのだそうですがここではドイツ語です。

さらにこの歌で興味深いのは、のちにドイツがプロシアを中心に統一国家となったときに、メロディを拝借されてドイツの国歌にもなったということです。この詩人はフランツ・リストの歌曲などで名前を見かけるフェルディナンド・フライリヒラート、こちらは1841年の作詞だそうです。1番、2番はさすがに現在では差し障りがありすぎて歌われることはないようですが、まさに東西の統合を表すかのような第3番だけは現在のドイツの国歌として歌われています。
 
 Deutschland,Deutschland über alles,
 Über alles in der Welt,
 Wenn es stets zu Schutz und Trutze
 Brüderlich zusammenhält,
 Von der Maas bis an die Memel,
 Von der Etsch bis an den Belt -
 Deutschland,Deutschland über alles,
 Über alles in der Welt.

 Deutsche Frauen,deutsche Treue,
 Deutscher Wein und deutscher Sang
 Sollen in der Welt behalten
 Ihren alten schönen Klang,
 Uns zu edler Tat begeistern
 Unser ganzes Leben lang.
 Deutsche Frauen,deutsche Treue,
 Deutscher Wein und deutscher Sang.

 Einigkeit und Recht und Freiheit
 für das deutsche Vaterland!
 Danach laßt uns alle streben
 brüderlich mit Herz und Hand!
 Einigkeit und Recht und Freiheit
 sind des Glückes Unterpfand.
 Blüh im Glanze dieses Glückes,
 blühe,deutsches Vaterland.


 ドイツよ、ドイツよ、すべてに冠たれ
 この世界のすべての上に
 攻める時も 守る時もつねに
 兄弟愛と共にあれ
 マース川からメーメル川まで
 エチュ川からベルト海峡まで
 ドイツよ、ドイツよ、すべてに冠たれ
 この世界のすべての上に

 ドイツの女性たちを、ドイツの忠誠心を、
 ドイツのワインを、ドイツの歌を
 この世界で守らねばならぬ
 昔ながらの美しき響きを
 われらを気高き行いへと奮い立たせよ
 われらが一生の間ずっと
 ドイツの女性たちよ、ドイツの忠誠心よ、
 ドイツのワインよ、ドイツの歌よ

 統一と正義と自由を
 父なる祖国ドイツの為に
 その為にわれら皆 戦い取らせたまえ
 兄弟のごとく心と手を共にして!
 統一と正義と自由は
 幸福の証である
 その幸福の栄光の中で花開け
 花咲け、ドイツよ、父なる国よ


( 2010.01.01 藤井宏行 )


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