Das strickende Mädchen XXVIa no. 1 12 Lieder für das Clavier |
編み物をする娘 12のクラヴィア伴奏歌曲第1集 |
“Und hörst du,kleine Phyllis,nicht Der Vöglein süsses Lied? Sie singen,sie antworten sich Da mich dein' Antwort flieht.” Phyllis ohne Sprach' und Wort Saß und strickte, Saß und strickte ruhig fort. “In deinen Augen herrscht der Gott Der Lieb' und zaubert blind; In deinem Herzen schlummert er Wie ein unschuldig Kind.” Phyllis ohne Sprach' und Wort Saß und strickte, Saß und strickte ruhig fort. “So manchen Tag,so manches Jahr, Schlich ich dir einsam nach; Und nie ein Wort und nie ein Blick Soll ich verzweifeln? Ach! “ Auf stand Phyllis ohne Wort, Ging und strickte, Ging und strickte ruhig fort. |
「きみは聞いていないのかい、小さなフィリスよ 鳥たちの甘い歌を? 彼らは歌う、彼らは答える なのにぼくにはきみの答えが返ってこない」 フィリスは、会話も言葉もなく 座って編み物してる 座って編み物してる 静かに 「きみの瞳は、神様だって支配する 愛の神様に 盲目の魔法を きみの胸の中で 彼は眠るんだ 無邪気な子どものように」 フィリスは、会話も言葉もなく 座って編み物してる 座って編み物してる 静かに 「こうして何日も こうして何年も ぼくはひとり きみを追いかけている なのに一言も 一瞥もないなんて ぼくは絶望しなくちゃならないのか?ああ!」 フィリスは、言葉もなく立ち上がり 立ち去って 編み物をした 立ち去って 編み物をした 静かに |
ハイドンの歌曲は現在知られているものが50曲ほどでしょうか。その中でも英語の詩につけた歌曲が有名で、「皇帝賛歌」などほんの一部の曲を除くとドイツ語の詩につけた歌曲はあまり注目されることがないのですが、それぞれ12曲からなる2つのクラヴィア伴奏による歌曲集は、作者不詳のものを含む多彩な詩人の色々な詩を縦横無尽に歌にしていて、まとめて聴いてみるとたいへんに面白いのです。音楽の友社の名曲解説全集では「器楽的発想で書かれた、歌曲というよりむしろクラーヴィアによる歌といった方が良い」とまで書かれてはおりますが、逆に言えば目の覚めるような美しいクラーヴィアの調べを堪能できるとも言えます。私はそれほど器楽的とも思わず、モーツアルトの良質のリートにも引けを取らない魅力的な歌揃いだと思っておりますが。
残念ながら日本であまり人気のないハイドンという作曲家の、しかもまた更に人気のない歌曲というジャンルだからでしょうか。日本ではかつてアメリンクが入れた全集録音以外には、この歌曲集をまとめて聴けるものはほとんどないのが実情です。しかもアメリンクの録音はかなり歌詞にカットがありますので(単純な有節歌曲がほとんどすべてですのでカットしてもあまり問題はないのかも知れませんが)、必ずしもその全貌が収められているというわけではありません。というわけでここではできるだけ完全なかたちでこれら合わせて24曲の歌詞をご紹介したいと思います。楽譜に直接あたれば良いのでしょうけれども今回はそこまでできず、ネット上の様々なソースなどを検索して合成しておりますので内容の精度には保証はありません(複数のソースを見つけたものは多少の校訂らしきものはしてみましたけれど)。ご了承の上ご活用頂ければ幸いです。
第1集の12曲は1781年の出版。作曲家がウイーンにいた時代のものです。第一曲は素朴な愛の歌。しかし歌っている男の子は悲しいですね。報われぬ恋。淡々と響く澄み切った長調のメロディがまた涙を誘います。原詩は見つけることはできませんでしたが、この詩はイギリスのチャールズ・セドリーの英詩を、ゲーテとも親交があり、ヨーロッパ各地の伝承詩をドイツ語に訳したヘルダーの手になるドイツ語訳に付けられています。
( 2009.11.15 藤井宏行 )