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Guitare   Op.17  
  6 Mélodies
ギター  
     6つのメロディー

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Rayons et les Ombres 23 Autre Guitare

曲: ラロ (Edouard Lalo,1823-1892) フランス   歌詞言語: フランス語


Comment,disaient-ils,
Avec nos nacelles,
Fuir les alguazils?
Ramez,disaient-elles.

Comment,disaient-ils,
Oublier querelles,
Misère et périls?
Dormez,disaient-elles.

Comment,disaient-ils,
Enchanter les belles
Sans philtres subtils?
Aimez,disaient-elles.

「どうやって」彼らは尋ねた
「ぼくたちのボートで
 スペインの警官から逃げるの?」
「漕ぐのよ」彼女たちは答えた

「どうやって」彼らは尋ねた
「忘れるの 争いごとや
 ひどい不幸や危険のことを?」
「眠るのよ」彼女たちは答えた

「どうやって」彼らは尋ねた
「美人たちをモノにできるの
 惚れ薬なしで?」
「愛するのよ」彼女たちは答えた


冒頭から、なんだかわからない展開の詩ですが、情けない男と肝の据わった女の会話がなんとも印象に残ります。ユゴー1838年出版の詩集「Les Rayons et les Ombres(光と影)」の中のこの詩、いろいろな人が曲を付けていて、ご紹介するラロのほかにもリストやビゼー、サン・サーンスなどがいる人気作品です。
(ロシア語訳にラフマニノフも作曲していて、「問いと答」という題名になっていますが、これは完全にロシア歌曲の熱情に溢れた別の世界の作品と思います)
ピアノ伴奏が無茶苦茶凝っているリストのものや、原詩にない「ラララララ」のフレーズも入れてお得意のスペイン情緒溢れる歌曲にしてしまったビゼーのも面白いのですが、やはりこの詩、なんだかわからなさを重視すると、ラロの付けた曲がひときわ目立ちます。というのは何を思ったのか、彼はサロン風の上品なメロディで格調高くこの詩を歌い上げたのです。確かに2番・3番はそれでも良いのでしょうが、「サツに追われたらどうしよう」の1番は違和感ばりばりで何とも不思議です。
ラロの歌曲自体、そんな感じの典雅な作品が多いので別段驚くには値しないのかも知れません。詩を気にせずにまとめて聴くと結構良い気分に浸れます。
ラロの歌曲集というと、Rodolpheから出ている、テレサ・ツィリス・ガラのソプラノのものしか知らないのですが、25曲も収録されていて嬉しいものの、彼女の重めの声がちょっと曲のスタイルとしっくりこないような気がするのが残念です。この曲を聴くだけなら、フランクの所でも取り上げた、イギリスのソプラノ、フェリシティ・ロットが入れた「ユゴーの詩による歌曲集」というのが、曲のスタイルと声質、解釈が絶妙で最高です(Harmonia Mundi)。
このCDの良いところは、先程挙げたビゼーとリストの作品も一緒に聴けるところで、このちょっと不思議な詩が、彼らにどんなインスピレーションを与えたのか聴き比べてみるのも一興ではないでしょうか。

( 1999.11.18 藤井宏行 )


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