Un grand sommeil noir M.6 |
巨大な黒き眠りが |
Un grand sommeil noir Tombe sur ma vie: Dormez,tout espoir, Dormez,toute envie! Je ne vois plus rien, Je perds la mémoire Du mal et du bien... O la triste histoire! Je suis un berceau Qu'une main balance Au creux d'un caveau: Silence,silence! |
巨大な黒き眠りが わが命の上に降りてくる 眠れ、すべての希望よ 眠れ、すべての羨望よ もはや何物も見えない 私は記憶をなくしたのだ 悪の記憶も 善の記憶も... おおなんと悲しき人生! 私はゆりかごだ 一本の手で揺らされる 小さな穴倉の底に置かれた 静かに、静かに! |
ヴェルレーヌの詩集「智慧」より。詩集ではこのあとの詩がフォーレやアーンの歌曲としても知られている「牢獄にて」です。その繋がりからも類推されるように、これはランボーに対する傷害罪で収監が決まったヴェルレーヌの絶望の歌なのだそうです。確かに「小さな穴倉の底の」などという言葉には牢獄のイメージが感じられますね。
若き日のラヴェルの付けた作品(1895)は非常に鮮烈。とりわけ中間部分のところ、「おお何と悲しい」のところで気持ちが昂ぶって叫び声になるところなどは聴いていてびっくりします。後年のラヴェルであればもっとひねりを利かせたところでしょうけれども、このストレートさはなかなかに好ましいところです。ラヴェルの歌曲の中でわずか2曲しかないヴェルレーヌの詩につけた歌曲。そのうちの1曲。もう1曲の「草の上」にと合わせ、いずれもラヴェルのこの詩人の豊饒な言葉との格闘が感じられて興味深いです。
( 2009.09.12 藤井宏行 )