Romance L 43 |
ロマンス |
Silence ineffable de l'heure Où le cour aimant sur un coeur Se laisse en aller et s'endort, Sur un coeur aimant qu'il adore! Musique tendre des paroles, Comme un sanglot de rossignols. Si tendre qu'on voudrait mourir, Sur la bouche qui les soupire! L'ivresse ardente de la vie Fait défaillir l'amant ravi. Et l'on n'entend battre qu'un coeur, Musique et silence de l'heure! |
ひとときの静けさに 心はひとつの心のことを愛する 行かせるが良い、そして眠らせよ 愛するものの心の上で! 優しき音楽の語り口は まるでナイチンゲールのすすり泣き とても優しすぎて死にたくなる者も出てくる 溜息をつく口の上で 人生の燃えるような陶酔感に 幸福な恋人は恍惚とする そして心臓の鼓動を聴く 音楽と、ひとときの静けさを |
同じ「ロマンス」というタイトルの歌曲は、やはり同じポール・ブルジェの手になる別の詩につけた1891年の「2つのロマンス」の第1曲の方が良く知られていますが、この1883年作のロマンスもなかなかに美しく魅力的な曲です。この頃のドビュッシーのポップソングかと見まがうばかりの旋律美は控え目で、むしろ中期以降の彼のスタイルを彷彿とさせる幻想的な雰囲気が強い曲ではありますが、後半部へ向けてのたたみかけるような盛り上がりはやはりポップです。歌詞も見るからにロマンティックですね。
若きドビュッシーを育てた(不倫相手でもありましたが)ソプラノ歌手であったヴァニエ夫人に捧げた歌曲として最近良く取り上げられるようになった作品でしょうか。EMIの歌曲全集録音には含まれておりませんでしたが、Sonyにあるドーン・アップショーの実に見事な歌唱で聴くことができます。
( 2009.08.31 藤井宏行 )