Perduta ho la pace 6 romanze |
安らぎは失われ 6つのロマンツェ(1838) |
Perduta ho la pace,ho in cor mille guai; Ah,no,più non spero trovarla più mai. M'è buio di tomba ov'egli non è; Senz'esso un deserto è il mondo per me. Mio povero capo confuso travolto; Oh misera,il senno,il senno m'è tolto! S'io sto al finestrello,ho gl'occhi a lui solo; S'io sfuggo di casa,sol dietro a lui volo. Oh,il bel portamento; oh,il vago suo viso! Qual forza è nei sguardi,che dolce sorriso! E son le parole un magico rio; Qual stringer di mano,qual bacio,mio Dio! Perduta ho la pace,ho in cor mille guai; Ah,no,più non spero trovarla più mai. Anela congiungersi al suo il mio petto; Potessi abbracciarlo,tenerlo a me stretto! Baciarlo potessi,far pago il desir! Baciarlo! e potessi baciata morir. |
安らぎは失われ、心の中には幾千もの苦しみ ああ、もう、もう希望は決して見つからない 私にはあの人のいない墓の暗さだけ あの人がいなければこの世は私にとっては砂漠 私の哀れにも混乱した頭ははちきれんばかり おお惨め、正気は、私の正気は失せてしまった もしも私が窓辺で、あの人だけを見つめていられるのなら もしもこの家を逃げ出して、あの人のもとへと飛んで行けたなら ああ、ご立派なお姿、あああのお顔のりりしさ なんという眼差しの力、なんという優しい笑顔! お言葉は魔法の川と流れ出し なんという手の力、なんというくちづけ、神様! ああ、もう、もう希望は決して見つからない 私にはあの人のいない墓の暗さだけ 願うのは私の胸を彼の胸に合わせること あの人を抱きしめることができたなら、固く私を抱いて あの人にくちづけることができたなら、この願いを満たせたら! くちづけ!そしてくちづけの中で死ねたなら! |
シューベルトがメロディを付けた「糸を紡ぐグレートヒェン」で有名なゲーテの「ファウスト」の一節、イタリア語に訳された歌詞にヴェルディが曲をつけています。同じ歌曲集にあるグレートヒェンの別の歌(第6曲)ほどのインパクトはないですが、やはり壮大なオペラのワンシーンといった感じで面白く聴けます。ファウストへの愛を高らかに歌う部分ではメロディも長調になって力強さを増し、最後に「死ねたなら」のところでさらっと締めるあたりなかなかの技です。
( 2009.08.31 藤井宏行 )