Erlkönig Op.1-3 Drei Balladen |
魔王 3つのバラード |
Wer reitet so spät durch Nacht und Wind? Es ist der Vater mit seinem Kind; Er hat den Knaben wohl in dem Arm, Er faßt ihn sicher,er hält ihn warm. Mein Sohn,was birgst du so bang dein Gesicht? - Siehst Vater,du den Erlkönig nicht? Den Erlenkönig mit Kron und Schweif? - Mein Sohn,es ist ein Nebelstreif. - “Du liebes Kind,komm,geh mit mir! Gar schöne Spiele spiel ich mit dir; Manch bunte Blumen sind an dem Strand, Meine Mutter hat manch gülden Gewand.” Mein Vater,mein Vater,und hörest du nicht, Was Erlenkönig mir leise verspricht? - Sei ruhig,bleibe ruhig,mein Kind; In dürren Blättern säuselt der Wind. - “Willst,feiner Knabe,du mit mir gehn? Meine Töchter sollen dich warten schön; Meine Töchter führen den nächtlichen Reihn Und wiegen und tanzen und singen dich ein.” Mein Vater,mein Vater,und siehst du nicht dort Erlkönigs Töchter am düstern Ort? - Mein Sohn,mein Sohn,ich seh es genau: Es scheinen die alten Weiden so grau. - “Ich liebe dich,mich reizt deine schöne Gestalt; Und bist du nicht willig,so brauch ich Gewalt.” Mein Vater,mein Vater,jetzt faßt er mich an! Erlkönig hat mir ein Leids getan! - Dem Vater grauset's,er reitet geschwind, Er hält in den Armen das ächzende Kind, Erreicht den Hof mit Müh' und Not; In seinen Armen das Kind war tot. |
誰がこんな遅い時間に馬を走らせているのだろうか 夜と風を抜けて? それは子を抱いた父親だ。 彼は少年をその腕に抱えている、 しっかりと抱き、暖めている 「息子よ、なぜそんなにおびえて顔を隠すんだい」 「見えないのお父さん、魔王がいるのが、 王冠と長い裾をした魔王が?」 「息子よ、それは霧の帯だよ」 「おい、かわいいぼうや、さあ、わしと一緒に行くのじゃ! とても楽しい遊びをわしはお前とやりたいぞ。 色とりどりの花がたくさん岸辺には咲いておるし、 わしの母は黄金の服をいっぱい持っておるぞ」 「お父さん、お父さん、聞こえないの、 魔王がぼくにこっそり話しかけていることが?」 「落ち着け、落ち着くんだ、わが子よ、 それは枯葉の中で風がささやいているんだ。」 「さあ きれいな子よ、わしと一緒に行かぬぞよ? わが娘はしっかりお前の世話をするはずじゃ。 わが娘は夜に輪舞へと連れて行き、 お前を揺らし、踊らせ、歌って休ませる。」 「お父さん、お父さん、あそこに見えないの、 魔王の娘たちが あの暗いところに?」 「息子よ、息子、よく見えるとも、 あれは古い柳が灰色になって見えるんだ」 「お前が気に入ったぞ、お前の美しい姿にわしはそそられる。 お前が嫌がろうと、わしは力づくじゃ。」 「お父さん、お父さん、ぼく もう捕まっちゃったよ! 魔王がぼくを苦しめるんだ!」 父親はぞっとして、馬を早める、 彼はうめく子を腕に抱えて ようやくのこと 屋敷へとたどり着いたが、 その腕の中で 子供は死んでいた。 |
同じ詩にシューベルトが曲を付けたものがあまりにも有名ですが、若き日のカール・レーヴェもまた曲を付けており、こちらも彼の代表作のひとつとされるくらい良く聴かれる作品となっています。馬を駆ける父親とその腕に抱かれて怯える子供、そしてその子を誘惑する魔王と、それぞれの登場人物の描写は典型的ですので、音楽の雰囲気もさほど違ったものではないのですが、あえてざっくりと一言で違いをいえば、メロディアスなシューベルトとドラマティックなレーヴェという感じでしょうか。確かに音楽的にはどうしても似たようになる物語の展開ではありますが、レーヴェの方が馬を駆ける疾走感や魔王の言葉の不気味さなどが強く出ている印象を受けました。最後の“das Kind war tot”の強調も少々やり過ぎの感はありますがインパクトは大きいです。
音楽的には似たようになる、と上で書きましたけれども、彼らよりほんのわずか上の世代でこの「魔王」に曲を付けたひとたち(比較的有名な人としてはシュポアやツェルター、トマーシェクなど)はみなドラマのかけらもない抒情的な歌にしてしまっています。その意味ではこのレーヴェやシューベルトのスタイルというのは当時としては革新的なものだったのではないかと思います。
( 2003.10.01 藤井宏行 )