Die schlanke Wasserlilie |
たおやかな睡蓮 |
Die schlanke Wasserlilie Schaut träumend empor aus dem See; Da grüßt der Mond herunter Mit lichtem Liebesweh. Verschämt senkt sie das Köpfchen Wieder hinab zu den Well'n -- Da sieht sie zu ihren Füßen Den armen blassen Gesell'n. |
たおやかな睡蓮が 夢見るように湖から空を見上げている すると恋に焦がれた月が 光をさして挨拶する 彼女が恥じらい 再び波間に顔を伏せると 哀れに青ざめた若者が 水面に映っている |
ハイネの詩ではレーヴェは、シューマンの作曲で有名な『蓮の花』にも作曲していますが、この『たおやかな睡蓮』という詩、ご覧の通り月に恋する蓮の花を描いた『蓮の花』の逆さま、まるでパロディです。ハイネには原曲と全く同じ『蓮の花』というタイトルのパロディ作品もあり、それは彼らしい皮肉でひねくれたものになっています。彼の皮肉や呪そが全然好きでないわたしは、彼の詩によるシューマンの『詩人の恋』もリーダークライス作品24もあまり好きではありません。しかしまるでメーリケのような『蓮の花』だけは例外で、同じ傾向のこの詩も好きです。それはハイネらしくないということでしょうが、2作もそのパロディ作を残したということは、よほど『蓮の花』が気に入っていたのか、あるいは後で恥ずかしくなったのか。おそらく後者ではないかと思いますが。
『たおやかな睡蓮』へのレーヴェの作曲は短調の悲歌風のもので、『蓮の花』も同じような感じです。両曲とも、白井光子さんが初期に録音した『花の歌曲集』というCD(独シグナム)に収められています。清楚な白井さんの声が、この詩の情景にぴったりです。このディスクは、他にミヨーの『花のカタログ』(フランス語)、シュトラウスの『ダリア』、作品22の4曲、ヴォルフの『クリスマスローズに1&2』、『わたしを花で覆ってね』などが収録されている楽しい企画盤でした。日本盤も一時出ていましたが、残念ながら現在廃盤で入手困難、復活を希望しています。
( 2002.01.16 甲斐貴也 )