TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Des fermden Kindes heil’ger Christ   Op.33-3  
  Legenden Heft I
異国の子のキリスト  
     伝説 第1巻

詩: リュッケルト (Friedrich Rückert,1788-1866) ドイツ
      Des fremden Kindes heiliger Christ

曲: レーヴェ (Johann Carl Gottfried Loewe,1796-1869) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Es läuft ein fremdes Kind
Am Abend vor Weihnachten
Durch eine Stadt geschwind,
Die Lichter zu betrachten,
Die angezündet sind.

Es steht an jedem Haus
Und sieht die hellen Räume,
Die drinnenm schau'n heraus,
Die lampenhellen Bäume,
Weh wird's ihm überaus!

Das Kindlein weint und spricht:
“Ein jedes Kind hat heute
Ein Bäumchen und ein Licht,
Und hat dran seine Freude,
Nur blos ich armes nicht!

An der Geschwister Hand,
Als ich daheim gesessen,
Hat es mir auch gebrannt,
Doch hier bin ich vergessen,
In diesem fremden Land!

Läßt mich denn Niemand ein
Und gönnt mir auch ein Fleckchen?
In all' den Häuser reih'n
Ist für mich denn kein Eckchen,
Und wär' es noch so klein?

Läßt mich denn Niemand ein?
Ich will ja selbst nichts haben,
Ich will ja nur am Schein
Der fremden Weihnachts gaben
Mich laben ganz allein!”

Es klopt an Tür und Tor,
An Fenster und an Laden,
Doch Niemand tritt hervor,
Das Kindlein einzuladen,
Sie haben drin kein Ohr.

Ein jeder Vater lenkt
Den Sinn auf seine Kinder;
Die Mutter sie beschenkt,
Denkt sonst nichts mehr,nichts minder;
Ans Kindlein Niemand denkt.

“O lieber heil'ger Christ,
Nicht Mutter und nicht Vater
Hab' ich,wenn du's nicht bist.
O sei du mein Berater,
Wenn man mich hier vergißt!”

Das Kindlein reibt die Hand,
Sie ist von Frost erstarret,
Es kriecht in sein Gewand,
Und in dem Gässchen harret,
Den Blick hinausgewandt.

Da kommt mit einem Licht
Durchs Gässlein hergewallet,
In weißem Kleide schlicht,
Ein ander Kind,wie schallet
Es lieblich da es spricht:

“Ich bin der heil'ge Christ,
War auch ein Kind vordessen,
Wie du ein Kindlein bist;
Ich will dich nicht vergessen,
Wenn alles dich vergißt.”

Dem Kind war's wie im Traum;
Es langten hergebogen Englein
Herab vom Baum zum Kindlein,
Das sie zogen hinauf zum lichten Raum.

Das fremde Kindlein ist
Zur Heimat eingekehret,
Bei seinem heilgen Christ,
Und was hier wird bescheret,
Es dorten leicht vergißt.

その子は異国の子供
クリスマスの夜に
町を抜けて足早に行く
あかりをじっと見つめながら
ともされたあかりを

家ごとに 立ちどまっては
あかるい部屋を見てる
中をのぞいて
いっぱいにランプのともるツリーをみる
とても かなしくなる!

その子は泣きながらこう言う
「こどもたちみんなには きょう
ツリーがあって キャンドルがあって
それでみんなうれしくて
かわいそうなぼくだけになにもない!

姉さんたちの手は
ぼくがおうちにいたときに
ぼくのために灯をともしてくれた
それなのにいまぼくはわすれられてるんだ
この知らない国で!

だれもぼくをいれてくれないの
やすませてくれるところもないの?
こんなにならんでるおうちの中に
ぼくにはほんのすみっこすらないの
どんなにちいさいところも?

だれもぼくをいれてくれないの?
なんにもいらないのに
ぼくはただ あかりのそばで
よその国のクリスマスプレゼントをみて
元気になりたいだけなのに!」

子供は門を 扉をたたく
窓を それから戸を
けれどもだれもでてこない
その子を招き入れてはくれない
だれも何も聞こえないのだ

父親はみな
自分の子供のことで頭がいっぱい
母親は子供にプレゼントをして
それ以上も、それ以下も何も考えない
この小さい子のことなど誰も気にかけないのだ

「おお愛しい聖なるキリストさま
お母さんもいなければお父さんもいない
このぼくには、もしあなたがなってくれなければ
おお ぼくにお言葉をください
ここでみんながぼくをわすれてしまうのなら!」

その子は手をさすった
その手は寒さのあまりかじかんでいたのだ
そしてフードをかぶって
路地裏でじっと待っている
目を遠くに向けながら

そこへ 光とともにやってきたのだ
路地裏を抜けてこちらへと
白い質素な衣をつけた
もうひとりの子供が、なんとも不思議な響きで
その子はやさしく語った

「わたしは聖なるキリスト
かつてはわたしも子供だった
きみが子供であるように
わたしはきみをわすれない
たとえみんながわすれても」

子供は夢の中にいるようだった
天使が手を差しのべてきた
ツリーから身をかがめ子供の方へと
そしてあかるい部屋へとつれていった

異国の子は
ふるさとへ帰っていった
かれの聖なるキリストのかたわらに
そしてここであったことは
あそこではたやすくわすれられるのだ


レーヴェの作品33は3曲のキリストの奇跡譚からなり、その第3曲がリュッケルトの詩によるこの「聖夜の奇跡譚」です。
このアンデルセンの童話「マッチ売りの少女」を思わせる物語、クリスマスの夜のシーンということで世の中の華やかさとこの子供の孤独との極端な対比が鮮烈。単純な旋律線の音形が、場面に応じてテンポを変え調を変えて登場し、またピアノパートは技巧的に冒頭で寒さにせきたてられる子供を十分に表現しています。
最後に死を迎えるとき、アンデルセンの物語ではやさしかった祖母の姿が現れてきましたが、ここでは子供の姿をしたイエス・キリストです。悲しい物語ではありますが、何か安らぎのあるラストです。

( 2002.12.21 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ