Heinrich der Vogler Op.56-1 Drei Balladen |
鳥刺しハインリヒ 3つのバラード |
Herr Heinrich saß am Vogelherd, Recht froh und wohlgemut; Aus tausend Perlen blinkt und blitzt Der Morgenröte Glut. In Wies und Feld,in Wald und Au, Horch,welch ein süßer Schall! Der Lerche Sang,der Wachtel Schlag, Die süße Nachtigall! Herr Heinrich schaut so fröhlich drein: Wie schön ist heut die Welt! Was gilt's,heut gibt's 'nen guten Fang! Er schaut zum Himmelszelt. Er lauscht und streicht sich von der Stirn Das blondgelockte Haar... Ei doch! was sprengt denn dort heran Für eine Reiterschar? Der Staub wallt auf,der Hufschlag dröhnt, Es naht der Waffen Klang; Daß Gott! die Herrn verderben mir Den ganzen Vogelfang! Ei nun! was gibt's? Es hält der Troß Vorm Herzog plötzlich an, Herr Heinrich tritt hervor und spricht: Wen sucht ihr Herrn? Sagt an! Da schwenken sie die Fähnlein bunt Und jauchzen: Unsern Herrn! Hoch lebe Kaiser Heinrich,hoch! Des Sachsenlandes Stern! Sich neigend knien sie vor ihm hin Und huldigen ihm still, Und rufen,als er staunend fragt: 's ist deutschen Reiches Will! Da blickt Herr Heinrich tief bewegt Hinauf zum Himmelszelt: Du gabst mir einen guten Fang! Herr Gott,wie dir's gefällt! |
ハインリヒ公は鳥の猟場に座る 陽気にとても御機嫌で 千の朝露はきらめき光る 朝焼けの赤い光に 畑に牧場に 森に野原に 聞け この甘い響きを! ヒバリの歌、ウズラのさえずり そして甘いナイチンゲール! ハインリヒ公は御機嫌よろしき様子 「今日の世界のなんと美しいことか! 見ておれよ 今日は見事な獲物を捕ろうぞ!」 彼は空を見上げた 彼は耳をすまし 額よりかき上げた そのブロンドの巻き髪を 「おや! あちらの方より何が駆けてくるのじゃ 騎馬隊のようなものであるかな?」 ほこりが巻き上がり、蹄がとどろく 武器の音が近づいてくる 「神よ!やつらのおかげで台無しではないか この鳥刺しが! おのれ!いったい何じゃ?」 一隊は止まった 公の前で突然に ハインリヒ公は進み出て言う 「誰をお捜しか諸君?言いたまえ!」 すると彼らは色とりどりの小旗を振って 歓び叫ぶ 「われらが主君! 万歳 皇帝ハインリヒ、万歳! ザクセン公国の星よ!」 公の前に深くひざまずき 静かに彼に忠誠を誓う そして答える 驚き訊ねる公に 「これはドイツ帝国の望みなのです!」 ハインリヒ公深く心を動かされ 遥か天を仰いだ 「御身は我によき獲物をくだされた! 神よ 御身の御心のままに!」 |
狩に出かけたハインリヒ公、しとめた獲物はなんとドイツの王位!という物語。ここに登場するハインリヒ公は東フランク王国で911年にカロリング朝の王統が絶えた後、ザクセン朝の初代国王となったハインリヒ1世のことです。王位を受け継ぐ報せを受けたとき鳥を捕らえることに興じていたという伝承に基づいてこの詩は書かれているのでしょう。Vogelfangはイメージとしてはかすみ網のようなものでしょうか。普通鳥刺しというとトリモチを使って鳥を捕まえることのようで、西洋に鳥もちはないから「鳥刺し」はおかしいという指摘もあります。ただモーツアルトの歌劇『魔笛』の中で登場してくるのも「鳥刺しパパゲーノ」と呼ばれることが普通のこととなっていることもありますし、ここでは鳥刺しと訳させて頂きました。この輝かしくも明るい歌、ヘルマン・プライの暖かくもユーモラスな声で聴くと、まさにパパゲーノのイメージでとても楽しく聴けました。
( 2002.02.14 藤井宏行 )