Minnelied im Mai Op.8-1 12 Gesänge |
五月の恋の歌 12の歌 |
Holder klingt der Vogelsang, Wenn die Engelreine, Die mein junges Herz bezwang Wandelt durch die Haine. Röter blühen Tal und Au, Grüner wird der Wasen, Wo die Finger meiner Frau Maienblumen lasen. Ohne sie ist alles tot, Welk sind Blüt' und Kräuter; Und kein Frühlingsabendrot Dünkt mir schön und heiter. Traute,minnigliche Frau, Wollest nimmer fliehen; Daß mein Herz,gleich dieser Au, Mög' in Wonne blühen! |
高らかに鳥の歌が響いてくる あの清らかな天使 ぼくの若い心をとりこにしたあの人が 森をそぞろ歩くときには ひときわ赤く花が咲く 谷間も野原も ひときわ緑に芝は萌える ぼくの恋人のその指が 五月の花を摘むところでは 彼女がいなけりゃ すべては死んでしまう 花も草も枯れ果てる そして春の夕焼け空でさえも ぼくには美しくも 楽しくもない 誠実な、美しいひとよ 逃げ去ろうなんて思わないで ぼくの心は、この草原のように 喜びの花でいっぱいになるのだから |
ブラームスやシューベルトがこの詩につけた作品が良く知られているでしょうか。とりわけ憧れに満ちた美しいメロディのブラームスのものが素晴らしいと思いますが、このメンデルスゾーンのものもなかなかに素敵な作品です。1828年に出版された作品8の第1曲ですので作曲はまだ20歳前。にも関わらずたいへんにこれも聴き応えのある作品です。民謡のように素朴な有節歌曲ではあるのですが、メロディの魅力はさすがメンデルスゾーン、ゆったりとした舟歌のような調べが幸せいっぱいのこの歌を彩ります。
作曲者の歌曲集作品では一番若い番号のついているこの作品8、興味深いこととしては12曲の作品のうち3曲が、彼の姉のファニーの作品であることです。女性が音楽家として身を立てることなど家が決して許してくれなかった時代、フェリックスの名でこれら歌曲作品を発表するというのもやむを得なかったところでしょうか。なおこのあとの歌曲集Op.9にも同じように3曲のファニーの曲が含まれています。
( 2009.04.01 藤井宏行 )