Auf der Wanderschaft Op.71-5 6 Lieder |
旅立ちによせて 6つの歌曲 |
Ich wandre fort in fernes Land, Noch einmal blickt' ich um,bewegt, Und sah,wie sie den Mund geregt, Und wie gewinket ihre Hand. Wohl rief sie noch ein freundlich Wort Mir nach auf meinem trüben Gang, Doch hört' ich nicht den liebsten Klang, Weil ihn der Wind getragen fort. Daß ich mein Glück verlassen muß, Du rauher,kalter Windeshauch, Ist's nicht genug,daß du mir auch Entreißest ihren letzten Gruß? |
私は遠くの国へと旅立つ 今一度私はあたりを見渡す、心動かされて そして見るのだ、どれほど彼女が口を震わせているのかを そしてどんなに彼女が手を振ってくれているのかを 健気に彼女は情愛に満ちた言葉を語る 重い足取りの私に向けて けれども私にはその愛らしい響きは聞こえない 風がそれを吹き飛ばしてしまったから 私は自分の幸福から去って行かねばならぬ お前 激しく、冷たい風のそよぎよ まだ十分ではないのか、お前は私から 彼女の最後のあいさつまでも奪い去るというのか? |
これも作曲者最晩年、急死の直前の1847年の作品です。当人がそれを予感していたとは思えませんが、選ばれた詩も、そしてそこに付けられた音楽もまさにメンデルスゾーンの「白鳥の歌」とでもいえるようなものになりました。同じく白鳥の歌をなすOp.71-3「遠くにいる人に」とOp.71-6「夜の歌」が基本は悲しい歌でありながら明るい表情を表向きは見せているのに対し、この曲だけはひたすらストレートにやるせない悲しみを歌っています。
( 2009.04.01 藤井宏行 )