An die Entfernte Op.71-3 6 Lieder |
遠くにいる人に 6つの歌曲 |
Diese Rose pflück' ich hier In der weiten Ferne, Liebes Mädchen,dir,ach dir, Brächt' ich sie so gerne! Doch bis ich zu dir mag ziehen Viele weite Meilen, Ist die Rose längst dahin; Denn die Rosen eilen. Nie soll weiter sich in's Land Lieb' von Liebe wagen, Als sich blühend in der Hand Läßt die Rose tragen; Oder als die Nachtigall Halme bringt zum Neste, Oder als ihr süßer Schall Wandert mit dem Weste. |
このバラの花たちをぼくはここで摘もう はるか遠い異郷の地で 愛しい娘よ、君に、ああ君に この花を喜んで届けたいのだ けれどぼくが君のもとにたどり着くまでには 長い長い距離がある バラはとっくに枯れてしまっているだろう だってバラは色あせやすいのだから 決して遠い国を超えて 愛と愛とをつなぐことはできないだろう 咲きほこるものを手に持って バラを運ぶようには あるいはナイチンゲールが わらを巣へと運ぶようには そして小鳥の優しい歌声が 西風に乗って漂うようには |
個人的にはメンデルスゾーンの歌曲の中では、このレーナウの詩に曲を付けたものが一番魅力的なように思えます。彼の伸びやかでほんの少し翳りを帯びたメロディが、レーナウの抒情的な詩句にとてもしっくりと来ているのです。そしてその中でも私はこの歌が一番好きなのですが、それはこの詩にほんのりとにじみ出ている寂しさが実につつましくひそやかに、一見明るい音楽の中に織り込まれているからではないかと思います。実はこの曲も同じ作品71の「夜の歌」などと同様、1847年に愛する姉ファニーを亡くしてからまだわずかしか経っていない時の作品。そして彼自身の死もすぐ間近な時に書かれたものでした。
ぼんやりと聴いていただけでは屈託のない明るいメロディですが、彼の歌曲「歌の翼に」などでも感じられる「決して手の届かないものに憧れることの悲しみ」といったものが聴けば聴くほどに感じられて心を打ちます。
( 2009.04.01 藤井宏行 )