Erwartung Op.2-1 4 Lieder |
期待 四つの歌 |
Aus dem meergrünen Teiche Neben der roten Villa Unter der toten Eiche Scheint der Mond. Wo ihr dunkles Abbild Durch das Wasser greift, Steht ein Mann und streift Einen Ring von seiner Hand. Drei Opale blinken; Durch die bleichen Steine Schwimmen rot und grüne Funken und versinken. Und er küßt sie,und Seine Augen leuchten Wie der meergrüne Grund: Ein Fenster tut sich auf. Aus der roten Villa Neben der toten Eiche Winkt ihm eine bleiche Frauenhand. |
海の緑色をした池が 赤い屋敷の脇にある 枯れたカシの木の間の家 その池の上に月が照っている カシの木々の暗い影が 水面に映っている ひとりの男が立って外している 指輪を彼の手から 三つのオパールがきらめく 蒼ざめたその石から 赤と緑の光が泳ぎ出し そして消えてゆく 彼は石にキスをした 彼の眼はきらめく 海の緑色の大地のように そして窓が開く 赤い屋敷 枯れたカシの木の横の屋敷から 男を差し招くのはひとりの女の 蒼白い手 |
シェーンベルク最初期のこの歌曲集、非常に多彩な表情ですが、この第1曲が一番彼のこのあとのスタイルを先取りしているでしょうか。くすんだ幻想的な音楽の色調の中、いかにもデーメルといった感じの詩が登場します。意味がちょっと分かりにくいところもありますが、視覚的イメージはとても鮮烈。池の緑と赤い家の補色同士のコントラスト、同じ対照は指輪にも現れますね。これに蒼白い、ほとんど灰色がかったモノトーンが絡んできて、とても色彩感あふれる詩です。音楽は終始モノトーンを貫きますけれども。
シェーンベルクはたいへん重要な歌曲作曲家なはずなのですが、前衛音楽のこわもてなイメージで損をしているからでしょうか、ほとんど取り上げられるのを聴いたことがありません。なかではこのOp.2の4曲だけは比較的取り上げられることが多いでしょうか。時折4曲をまとめた録音を目にします。
( 2009.04.01 藤井宏行 )