Verführung Op.33-1 TrV 180 Vier Gesänge |
誘惑 4つの歌 |
Der Tag,der schwüle, Verblaßt,und in dieser Kühle Begehrt nun zu ruh'n,was sich ergeben dem Fest der Lust Nun schmiegt mit Beben sich Brust an Brust... Es hebt der Nachtwind die Schwingen weit: “Wer liebt,der wacht auch zu dieser Zeit!...” Er küßt die Welle,und sie ergibt Sich ihm zur Stelle,weil sie ihn liebt. O großes Feiern! O schönste Nacht! Nun wird sich entschleiern alle Pracht, Die Tags verborgen in Zweifeln lag, In Angst und Sorgen. Nun wird es Tag! Still stößt vom Strande ein schwankes Boot. Verläßt die Lande der Mörder Tod? Er ward vergebens hierher bestellt: Der Gott des Lebens beherrscht die Welt!... Welch' stürmisch' Flüstern den Weg entlang? Was fleht so lüstern? was seufzt so bang? Ein Niegehörtes hört nun dein Ohr Wie Gift betört es: was geht hier vor? Der Sinn der Töne ist mir bekannt, Drum gib,o Schöne,mir deine Hand: Der ich zu rühren dein Herz verstand, Ich will dich führen in's Wunderland!... Mit süßem Schaudern reißt du dich los. Was hilft dein Zaudern? Dir fiel dein Los! Die Stimmen schweigen. Es liebt,wer wacht! Du wirst mein eigen noch diese Nacht! |
昼、この暑苦しきものも、 今や青ざめ、そしてこの涼しさの中に 今休息を始めようとするのは、この快楽の宴へと自らを捧げる者だ 今 震えながら寄り添う 胸と胸... 夜の風が広げるのは 大きな翼: 「愛しあう者が目覚めるのだ まさにこの時に」 夜の風は波にくちづけし、波は身を任せる 風のなすがままに、なぜなら波は風を愛しているから。 おお、偉大な饗宴よ!おお こよなく美しい夜よ! 今その身をさらけ出すのは あらゆる華やぎだ、 それは昼間には隠されていたのだ 疑惑の中で、 苦しみと悲しみに満ちて。だが今 昼は終わったのだ! 静かに岸辺を離れてゆく 一艘の揺れ動く小舟 陸地から押しやっているのは命を奪い去る「死」だろうか? だけどやつは空しくもここに呼ばれただけだ: 生命を司る神がこの世を支配するんだから! どのような激しいざわめきがこの道を通り過ぎるのか? 何がそんなにみだらに嘆願するのか? 何がそんなに不安そうにため息をつくのか? 聴こえるはずのないものが今 お前の耳に聴こえるのだ 毒が耳を惑わすなら:ここで何が起こるのだろう?! その音の意味は 私が知っている、 だから与えよ、おお美しい人よ、私にお前の手を 私はそれを揺り動かして お前の心を理解するのだ、 私はお前を連れて行こう あのすばらしき世界へと! 甘い震えとともに お前は離れようとするのか。 そのためらいが何の助けになるというんだ? お前の運命は決まったのだ! ふたつの声は沈黙する。愛し合うのだ、目覚めている者は! お前は私のものだ 今宵もまた! |
Op.33はもともと管弦楽の伴奏で歌われることを前提として書かれた作品で、それもあってシュトラウスの歌曲の中でも長大かつ響きが豪華です。この第1曲も楽劇「バラの騎士」のクライマックスを思わせるような濃密な響きの上でたいへんにロマンティックな情景が織り成されて行きますので、彼の交響作品やオペラしか聴かないという人にもきっとご満足頂けるであろう魅力に満ち溢れています。ワンダーランド(Wunderland)へと誘うクライマックスの壮大な盛り上がりはとりわけ印象的。詩のマッケイは父親がイギリス人だったのでこんなイギリス風の名前ですが、ドイツの詩人として名をなしています。シュトラウスの歌曲の代表作ともいえるOp.27-3「ひそやかな誘い」やOp.27-4「あした Morgen」などの詩が彼の手になるものです。
この曲はソプラノで歌われることが多く、フェリシティ・ロットの歌ったChandos盤(伴奏はネーメ・ヤルヴィ指揮のスコッティッシュナショナル管弦楽団)などが堂々たる秀演ですが、それよりもインパクトがあったのがテノールのジークフリート・イエルザレムがクルト・マズアの指揮ライプツィヒゲバントハウス管弦楽団の伴奏で歌っているもの(Philips)。まさに熱情あふれる「誘惑」になっています。日本ではなんとなく過小評価されている感のあるクルト・マズアの指揮もここではシュトラウスの管弦楽の色彩感を見事に引き出していて素晴らしいですし、ワーグナー歌手として鳴らしたイエルザレムの爆発的な声のパワーには陶然とさせられてしまいます。
( 2008.10.01 藤井宏行 )