Die kleine Spinnerin K.531 |
小さな紡ぎ娘 |
“Was spinnst du?” fragte Nachbars Fritz, Als er uns jüngst besuchte;. “Dein Rädchen läuft ja wie der Blitz! Sag’ an,wozu dies fruchte! Komm lieber her zu uns in’s Spiel!” Herr Fritz,das laß’ ich bleiben, Ich kann mir,wenn er's wissen will, So auch die Zeit vertreiben! Wozu mir’s fruchte? Ei,wie fein! Er muss doch wenig wissen! Ließ‘ er hübsch auch das Spielen sein, Würd‘ er nicht fragen müssen. Für meiner kleinen Schwestern Paar Spinn‘ ich zu Hemdchen Linnen: Die Teurung wächst ja jedes Jahr, Und ich,sollt‘ ich nicht spinnen? Erspinn’ ich einen starken Bund, Der so ein Stück betrage, So wägt die Mutter Pfund für Pfund Auf uns’rer Schalenwaage. Und was sie sonst für’s Spinnen gab, Bemerkt sie mit der Kreide Und zieht’s wie für die Spinn’rin,ab, Für mich zu einem Kleide. Wenn andre Mädchen schmutzig sind, Hab‘ ich dann hübsche Röckchen; Ei! Heißt es,welch’ ein schönes Kind! Und spielt auch nicht mehr Döckchen! Dies höret meine Mutter gern, Und mir,mir macht es Ehre: So viel verlör‘ ich,seht,ihr Herrn, Wenn ich nicht fleißig wäre. Drum schnurre,liebes Rädchen,bald Voll Fädchen meine Spule; Es kommt der Winter,da ist’s kalt Für’s Schwesternpaar zur Schule. Und wenn es so die Leute säh’n Daß sie vom Froste litten, Wie würden die dann auf mich schmäh’n!- Nein,das will ich verhüten. |
「何を紡いでいるのさ」と お隣のフリッツが聞いたの つい最近あたしたちのところにやってきた時に 「君の糸車は稲妻みたいに回ってるじゃないか 教えてよ、いったい何ができるんだい! こっちへ来てさ ぼくらとあそうぼうよ」 フリッツくん あたしに構わないでよ 知りたいのなら教えてあげるけど あたしこうやって時間を使ってるのよ 何のためにですって?ええ とてもすごいのよ! 彼ってほとんど何も知らないんだから あんなに遊んでばかりいなかったら こんなこと聞かなくても分かるのに あたしのちっちゃい妹たちのために リネンのシャツの糸を紡いでるのよ 物価は毎年上がっていくのよ それでもあたし紡いじゃいけないのかしら? あたし丈夫なバンドを紡ぐの それはとっても大変な仕事なのよ できあがったらお母さんが1ポンド、1ポンドとのせてくれるわ あたしたちの天びん秤の上に それでその他に母さんが紡いだら 母さんはチョークで印をつけるの そして糸車を回して あたしのお洋服を作ってくれるのよ ほかの女の子たちが汚れていても あたしはきれいなお洋服を着られるでしょ おや!みんな言うわ なんて可愛い子でしょって もうお人形なんかでは遊ばないでしょうねって その言葉を母さんが聞いたら あたしのことをとっても誇りに思うでしょ だから損しちゃうのが分かるのよ、ねえ もし一生懸命やらなかったら だから回ってね、あたしの糸車、もうすぐ 糸巻きは糸でいっぱいになるわ やがて冬がきて、寒くなるの 妹たちが学校に行くのにね そしてもしそのときみんなが あの子たちが寒さに苦しんでるところを見たなら みんなあたしのことどう思うかしら いやよ!そんなことあっちゃいや |
作詞者不詳のこの歌、モーツアルトの旧全集では3番までで、そのうち2・3番はD.イェーガーという人の恐らく後に付けられた詞によって歌われていました。シュヴァルツコップなどの名唱がみなそうでしたので、私もずいぶんその歌詞の中のおしゃまな女の子の微笑ましい台詞になじんでおりました。今回新全集に載せられたオリジナルとおぼしき歌詞はしかしながらそんな微笑ましい子供像をくつがえす衝撃的なものでした。
ここでの娘は物価の高騰に悩み、世間や親の目を気にしている打算的でしたたかな子です。へらへらと遊びほうけている同年代の男の子には恐らく理解不能であろうとおぼしき問題発言がたくさん並んでいて何とも居心地の悪いものを感じてしまいますが、それがオリジナルであるというのなら仕方ありません。
素朴この上ないメロディの上にこれが歌われるというのは何とも違和感があるのですが、それが実はモーツアルト一流のブラックユーモアというところもあるのでしょう。
モーツアルトの傑作歌曲が量産された年、1787年の最後を飾っているのがこの作品です。
最近はこの新全集の歌詞で歌う歌手も増えてきたようです。ただ長いのでだいぶカットして歌うことが普通でしょうか。興味深いのはエディット・マティスの旧録音(DG)。恐らく1972年ごろの録音のはずですがこの時点で彼女は既にこちらの歌詞で歌っています(全体で半分くらいにカットはしていますが)。
もちろん今でも、イェーガーの付けた歌詞で歌っている歌手も多いです。やはり小さな女の子はもっと純真であるべきだ、といったところでしょうか。ただその考えはちょっと現実的ではないようにも私は感じますけれども。
( 2008.08.26 藤井宏行 )