Der Zauberer K.472 |
魔法使い |
Ihr Mädchen,flieht Damöten ja! Als ich zum erstenmal ihn sah, Da fühlt' ich,so was fühlt' ich nie, Mir ward,mir ward,ich weiß nicht wie, Ich seufze,zitterte,und schien mich doch zu freu'n; Glaubt mir,er muß ein Zaub'rer sein. Sah ich ihn an,so ward mir heiß, Bald ward ich rot,bald ward ich weiß, Zuletzt nahm er mich bei der Hand; Wer sagt mir,was ich da empfand? Ich sah,ich hörte nichts,sprach nichts als ja und nein; Glaubt mir,er muß ein Zaub'rer sein. Er führte mich in dies Gesträuch, Ich wollt' ihm flieh'n und folgt' ihm gleich; Er setzte sich,ich setzte mich; Er sprach,nur Sylben stammelt' ich; Die Augen starrten ihm,die meinen wurden klein; Glaubt mir,er muß ein Zaub'rer sein. Entbrannt drückt' er mich an sein Herz, Was fühlt' ich Welch ein süßer Schmerz! Ich schluchzt',ich atmete sehr schwer, Da kam zum Glück die Mutter her; Was würd',o Götter,sonst nach so viel Zauberei'n, Aus mir zuletzt geworden sein! |
ねえみんな、ダメートに近寄ったらだめよ あたしが初めて彼を見たときに、 あたし感じたの、今まで一度も感じたことのない気持ちを あたしは、あたしは、あたしはどうなったのかしら 溜息をついて震えたけれど、それでも喜びを感じていたわ 信じて、彼はきっと魔法使いなの 彼を見つめたら、あたし熱くなって 真っ赤になったり、青ざめたりしたわ 最後に彼があたしの手を握ったとき 誰が分かるでしょう、あたしが何を感じたかなんて? 見ることも、聞くこともなく 「はい」と「いいえ」しか言えなかった 信じて 彼はきっと魔法使いなの 彼はあたしをこの茂みの中へと連れて来たわ あたし逃げるつもりだったけど ついて来ちゃった 彼が座り、あたしも座ったの 彼はしゃべったけれど、あたしは口ごもり 瞳でかれはじっと見つめ、あたしの瞳は小さくなった 信じて 彼はきっと魔法使いなの 激しく彼はあたしを胸に抱いた 私が感じたのは何!なんという素敵な苦痛! あたしはすすり泣き、息がつまりそうだった そこへお母さんが来てくれて助かったわ そうでなかったら、神様、こんなにたくさんの魔法をかけられて 最後にあたしはどうなっていたのかしら! |
モーツアルトの歌曲においては比較的少ない短調の曲ですが、ここでその悲しくも切迫した響きを選んだのはひとえにこの初めて恋を知った少女の一人よがりの語りをちょっとからかっている、といったイメージでしょう。年を食った大人にとってみればそれほどどうっていうことのないと思えてしまう経験でも、初めてそういう気持ちになったウブな少女には天地がひっくり返るような事件だったのでしょう。友達を集めて大げさに自分の初体験を語っているところは、音楽が悲しげであるにも関わらず微笑ましくすら感じられます。
詩のヴァイセはモーツアルトのお気に入りだったのでしょうか。あまり多いとは言えない彼の歌曲においても4曲がヴァイセの詩です。特にこの曲を含むK 472〜474までの3曲は1785年の5月7日に一気に書かれているようですがすべてこのヴァイセの詩、そして3曲が3様に多彩な表情をしているところが興味深いです。今回全部取り上げて見ましたので詞のみではありますが見比べて頂ければ幸いです。
( 2008.08.26 藤井宏行 )