Wer hat's getan TrV 142,AV 84A |
誰がしたのか |
Es steht mein Lied in Nacht und Frost, die alles Leben töten, und harrt vergebens, ob der Ost nicht wieder mag erröten. So steht es nun ein ganzes Jahr in dieser Nacht,der kalten, und dennoch grünt's noch immerdar, wer hat es wohl erhalten ? Du nicht,du nicht,von aller Welt bewundert und beneidet. Der hat's getan,der auf dem Feld die Lilien kleidet. |
ぼくの歌は夜と霧の中にある すべてのものを死なせ それでもむなしく待っているのだ 再び東の空が赤らんではくれないかと そんな風にこの歌は一年中そこにいる この夜の、冷気の中 そしてそれでもなお緑は永遠なのだ 一体誰がそれを育てているというのか? お前ではない、お前ではないのだ、この世界の中の皆から 尊敬され、羨まれている方、 その方がそれをしたのだ、その方がこの野で ユリの花を身にまとっている |
もともとはこの曲、「献呈」や「夜」、「万霊節」などと同じ作品10に含まれていたもので、これらと同じギルムの詩集「最後の手紙」の中の詩です。歌曲集を組むときに外されましたが、今でも作品番号なしの単独の歌曲としてしばしば歌われます。作品10では第6曲になる予定だったそうですので、あの鮮烈な「口の堅い者たち」がこれに置き換わったことになります。あの曲ほど研ぎ澄まされてはおりませんが、この曲もかなりの内省的な前半の雰囲気と、後半のロマンティックなメロディが絶妙につなぎ合わされてなかなかに印象的な作品です。とりわけ2連目の「そしてそれでもなお」の部分で美しいメロディで盛り上がるところや、非常に長い後奏の陶酔的なピアノが良いです。
( 2008.10.01 藤井宏行 )