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Muttertändelei   Op.43-2 TrV 196  
  Drei Gesänge älterer deutscher Dichter
母のたわ言  
     3つの古いドイツの歌

詩: ビュルガー (Gottfried August Bürger,1747-1794) ドイツ
      Muttertändelei

曲: シュトラウス,リヒャルト (Richard Strauss,1864-1949) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Seht mir doch mein schönes Kind,
Mit den gold'nen Zottellöckchen,
Blauen Augen,roten Bäckchen!
Leutchen,habt ihr auch so eins?
Leutchen,nein,ihr habt keins!

Seht mir doch mein süßes Kind,
Fetter als ein fettes Schneckchen,
Süßer als ein Zuckerweckchen!
Leutchen,habt ihr auch so eins?
Leutchen,nein,ihr habt keins!

Seht mir doch mein holdes Kind,
Nicht zu mürrisch,nicht zu wählig!
Immer freundlich,immer fröhlich!
Leutchen,habt ihr auch so eins?
Leutchen,nein,ihr habt keins!

Seht mir doch mein frommes Kind!
Keine bitterböse Sieben
Würd' ihr Mütterchen so lieben.
Leutchen,möchtet ihr so eins?
O,ihr kriegt gewiß nicht meins!

Komm' einmal ein Kaufmann her!
Hunderttausend blanke Taler,
Alles Gold der Erde zahl' er!
O,er kriegt gewiß nicht meins! -
Kauf' er sich woanders eins!

ウチのキレイな娘をご覧あそあせ
こんなに美しいカールした金の髪に
青い瞳、赤い頬なんでございますわよ
奥様、こんな子がおりまして?
奥様、こんな子は他におりませんですわよね!

ウチのかあいい娘をご覧あそあせ
まあるいカタツムリよりもポッチャリして
菓子パンよりも甘いんでございますわよ
奥様、こんな子がおりまして?
奥様、こんな子は他におりませんですわよね!

ウチの立派な娘をご覧あそあせ
まるで短気じゃございませんし、好き嫌いもありませんで
いつも朗らかで快活なんでございますわよ
奥様 こんな子をお持ちでしたかしら
奥様 奥様はお持ちではございませんわね

ウチの優秀な娘をご覧あそあせ
ぷんぷん怒ったりいたしませんし
母親をたいへん大事にするんでございますわよ
奥様 こんな子が欲しいとお思いになりませんこと?
あら もちろんウチのを差し上げたりは致しませんですわ

業者の方がおいで下さっても結構ですわよ
何十万の金貨でも
この世のすべての財宝でもお出しなさいませな!
あら もちろんウチの娘を買うことなんてできませんわ
よそのお宅の子をお買いなさいませ


シュトラウスの面目躍如たる作品ですね。わざと稚拙な感じの音楽にして滑稽な感じを強調してはおりますが、実は非常に緻密に書けている作品のように思います。できそこないのモーツァルトの作品のように思わせておきながら一筋縄では行かないのがさすが。キリ・テ・カナワの洒落た歌声にピアノの伴奏をつけているショルティのヘタウマな技(彼のピアノの腕前は他の曲では惚れ惚れさせられるような見事さなのですが、この曲だけはまるでアマチュアみたいです。伴奏自体がそう聴こえるように書かれているというのもあるのでしょうけれども...)、あるいはオーケストラ伴奏ですけれども、この人以上のはまり役はいないとさえ思えるシュヴァルツコップの歌ではジョージ・セルの指揮ロンドン交響楽団の伴奏ですが、最後の勝ち誇ったようなオーケストラの高笑いが見事です。
「たわ言」という言葉をあてましたタイトルのtändeleiですが、辞書によれば恋人たちの取りとめもない会話のことをいうようです。こんな風に娘を溺愛してよその奥さんに自慢している姿を見ると、辞書にはありませんでしたがこの「たわ言」というのが一番しっくりくるように思えましたのでそれを選ぶことにしました。褒める喩え方などは現代日本の感覚ではちょっと違和感のあるものもありますが、そのあたりの文化の違いを味わってみてください。それと現代の日本でも近所に必ずひとりかふたりはいるこんな感じのオバサンのことを思い起こしながら、人類の普遍性に思いを馳せるのも良いのではないでしょうか。

( 2008.10.01 藤井宏行 )


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