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Marmotte   Op.52-7  
  Acht Lieder
マーモット  
     8つの歌

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
    Das Jahrmarktsfest zu Plundersweilern (1778)  Marmotte

曲: ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven,1770-1827) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Ich komme schon durch manches Land,
Avec que la marmotte,
Und immer was zu essen fand,
Avec que la marmotte.

Avec que sí,avec que là,
Avec que la marmotte.


Ich hab gesehn gar manchen Herrn,
Avec que la marmotte,
der hat die Jungfrau gar zu gern,
Avec que la marmotte.

Avec que sí,avec que là,
Avec que la marmotte.


Hab' auch gesehn die Jungfer schön,
Avec que la marmotte,
die täte nach mir Kleinem sehn,
Avec que la marmotte.

Avec que sí,avec que là,
Avec que la marmotte.


Nun lasst mich nicht so geh,ihr Herrn,
Avec que la marmotte,
die Burschen essen und trinken gern,
Avec que la marmotte.]2

Avec que sí,avec que là,
Avec que la marmotte.

わたくしは今までたくさんの国々を旅してきましたよ
マーモットと一緒に
そしていつでもおまんまは見つけてきましたよ
マーモットと一緒に

一緒にこちら、一緒にあちら
マーモットと一緒に


わたくしはたくさんの殿方たちを見てきましたよ
マーモットと一緒に
それはそれは若い娘たちが大好きな殿方たちでした
マーモットと一緒に

一緒にこちら、一緒にあちら
マーモットと一緒に


わたくしはたくさんの若い娘さんたちも見てきましたよ
マーモットと一緒に
わたくしのような下賎な者にも優しく目をかけて下さる方たちでした
マーモットと一緒に

一緒にこちら、一緒にあちら
マーモットと一緒に


さて わたくしをそんな風に行かせないでください、皆様方
マーモットと一緒に
この若者たちは食ったり飲んだりするのが大好きなのですから
マーモットと一緒に

一緒にこちら、一緒にあちら
マーモットと一緒に


ゲーテ若き日の風刺劇「プルンダースヴァイレルンの年の市(Jahrmarktsfest zu Plundersweilern)」のワンシーン、市場に登場した旅芸人の少年が歌う歌をなぜか若き日のベートーヴェンがメロディを付けています。作品番号こそOp.52と大きめですが、実のところ出版が遅かっただけで作曲は20代そこそこのかなり若い時分。彼には意外とゲーテの詩につけた歌曲がたくさんありますが、その中でも恐らく一番最初に書かれたものです。素朴この上ないメロディは今やほとんど民謡と化しているような感もあって、中世の吟遊詩人が使っていたような古楽器を使った伴奏で歌われているこの歌など、本当に13〜4世紀に書かれたかのように聴こえてきます。
ベートーヴェンは冒頭の一連目しか楽譜には取り上げていないようですが、それだと非常に短い曲となってしまうが故、それ以降の部分も一緒に歌われるケースも良くあります。この詩は分量も少なくそれほど翻訳が難しくありませんでしたので、全部を取り上げてご紹介致しましょう。
マーモット(アルプスマーモット)というのはヨーロッパでは芸を仕込むと色々できるのだそうで、フランスのアルプスの麓、サヴォア地方の少年たちが仕込んだマーモットをつれてヨーロッパ各地を大道芸で巡る、というのが昔はよくあったのだそうです。それもあってかこの歌詞、「マーモットと一緒に」のところはフランス語ですね。ドイツ語とフランス語がチャンポンになっているところがまた祭の市場の猥雑さを表しているようで興味深いところです。
なおこのマーモット、よくモルモットと訳されておりますが、この2つの動物、全くの別ものだそうですのでご注意を。もっとも日本ではマーモットの芸など見たことのある方はそんなにいないと思いますのでどっちでも良いといえば良いのでしょうけれど。

( 2009.04.01 藤井宏行 )


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