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En Digters sidste Sang   Op.18-3  
  9 Romanser og sanger
ひとりの詩人の最後の歌  
     9つの歌とロマンス

詩: アンデルセン (Hans Christian Andersen,1805-1875) デンマーク
    Digte 36 En Digters sidste Sang (1844)

曲: グリーグ (Edvard Grieg,1843-1907) ノルウェー   歌詞言語: デンマーク語


Løft mig kun bort,Du stærke Død,
Til Aandens store Lande!
Jeg gaaer min Vei,som Gud mig bød,
Fremad,med opreist Pande.
Alt hvad jeg gav,Gud,det var dit,
Min Rigdom ei jeg vidste!
Hvad jeg har øvet,er kun lidt,
Jeg sang som Fugl paa Qviste.

Farvel hver Rose frisk og rød,
Farvel,I mine Kjære!

Løft mig kun bort Du sterke Død,
Skjøndt her er godt at være!
Hav Tak,o Gud,for hvad Du gav,
Hav Tak for hvad der kommer!
Flyv Død,hen over Tidens Hav,
Bort til en evig Sommer!

私を抱えて連れ去るがいい、強大な死よ
魂の偉大な国へと!
私は我が道を行く、神が私に求めたように
まっすぐに、高く上げた額で。
私がなしたことのすべては、神よ、あなたのものだ
私の値打ちなど知ろうはずがない!
私が作り上げたものなど、ほんのわずかなのだ
枝の上の小鳥のように歌っただけのこと

さらば、みずみずしく赤いバラよ
さらば、私の悲しみよ!

私を抱えて連れ去るがいい、強大な死よ
この世にあることが喜びであったのだ!
感謝します、おお神よ、御身の与えて下さったものに
感謝します これからやってくることに
飛び去るががいい死よ、時の海を越えて
この永遠の夏の国から!


童話作家としてだけでなく、詩人としても活躍したデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセンが、まさに自分自身のことを歌った詩です。これが遺作だったりすると出来過ぎなのですけれども、実際はかなり若い頃の作品のようです(グリーグの詩を紹介しているノルウェーのサイトでは1843年の作とありましたのでまだ彼が40代の作品ということになるでしょうか)。もっとも日本語訳をしている山室静のものでは少々私の見たものと内容が異なっておりまして、もっと晩年の作品であるという記述があったように記憶しておりますので(ネット上でもそのような記述をいくつか見ることができました)、実際は晩年に改作している最終稿があるのかも知れません。この山室静の訳した日本語の詩には信長貴富がメロディをつけて合唱曲にしておりますので、その筋の方には良く知られた詩のようではあります。
デンマーク語ですので正確さの保証はありませんが、私のできる限りの訳をつけて見ましたので、もし山室訳をご覧になられる機会がありましたら(「一詩人の最後の歌」というタイトルになっています)違いを見比べてみてください。私の訳語のまずさもあるかとは思いますが、山室訳のものの方がこのグリーグが曲を付けた詩から私が感じたよりもずっとロマンティックな感じがします。

このアンデルセンの詩をたくさん取り上げているOp.18の歌曲集の第3曲で、静かに歌われる讃美歌のようなメロディが非常に印象的です。北欧らしさ、グリーグの歌曲らしさはあまり感じませんが、これはこれで魅力的な作品のように思います。

( 2008.10.11 藤井宏行 )


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