Ekho Op.45-1 Poetu |
こだま 詩人に |
Revet li zver’ v lesu glukhom, Trubit li rog,gremit li grom, Poet li deva za kholmom - Na vsjakij zvuk Svoj otklik v vozdukhe pustom Rodish’ ty vdrug. Ty vnemlesh’ grokhotu gromov, I glasu buri i valov, I kriku sel’skikh pastukhov - I shlesh’ otvet; Tebe zh net otzyva... Takov I ty,poet! |
ざわめく森の中で野獣が唸ろうと 角笛が鳴ろうと、雷鳴が轟こうと 丘の上で乙女が歌おうと どんな音に対しても その応答をうつろな空に向かって お前はすぐに生み出すのだ お前は聴き入る 雷の轟きに 嵐や波の声に そして村の牧童の声にさえも それから答えを返すのだ だがお前には何も帰ってはこない...それは お前も同じだ、詩人よ! |
リムスキー=コルサコフが1897年に立て続けに書いた表題付きの歌曲集のうち2番目にあたる「詩人に」。5曲からなっていますがその第1曲と最終曲がプーシキンの詩。残り3曲がリムスキーが愛好してたくさんの歌曲を書いているアポロン・マイコフの詩です。第3曲の「八行詩」が比較的良く演奏されますが、あとはほとんど取り上げられることもなく、知られざる歌曲集となってしまっています。私も全曲を通して聴いたことはないのですが、ここに取り上げられているプーシキンの詩がなかなかに印象深かったので、将来聴けた時のためにこうして自分の訳を残しておくことにしました。詩の内容に特に解説は必要ないかとは思いますが、最後に自嘲するかのように「お前も同じだ、詩人よ」とあるのが印象的ですね。プーシキンほど含蓄のある詩を書いているわけではありませんが、私もここにこうしてこのこだまと同じように反響のほとんど返ってこない訳詞と駄文を載せ続けてきましたので、この詩の中身には非常に共感するところがあります。まあ私の場合はイヤなら止めれば済む話なのですが...
プーシキンの詩は1831年の作品。かなり晩年に近く(といってもまだ30代はじめですが)、もう詩人としての名声は押しも押されぬものとなっていてもこれですから、創造活動というのは本当に厳しいですね。どんな天才の霊感あふれる作品でさえもこだまが消え去っていくように世には受けれられないということも決して珍しくはないのですから。
( 2008.09.24 藤井宏行 )