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The Vagabond    
  Songs of Travel
放浪者  
     旅の歌

詩: スティーヴンソン (Robert Louis Balfour Stevenson,1850-1894) イギリス
    Songs of Travel and other verses 1 The Vagabond

曲: ヴォーン=ウィリアムズ (Ralph Vaughan Williams,1872-1958) イギリス   歌詞言語: 英語


Give to me the life I love,
Let the lave go by me,
Give the jolly heaven above,
And the byway nigh me.
Bed in the bush with stars to see,
Bread I dip in the river -
There's the life for a man like me,
There's the life for ever.

Let the blow fall soon or late,
Let what will be o'er me;
Give the face of earth around,
And the road before me.
Wealth I seek not,hope nor love,
Nor a friend to know me;
All I seek,the heaven above,
And the road below me.

Or let autumn fall on me
Where afield I linger,
Silencing the bird on tree,
Biting the blue finger.
White as meal the frosty field -
Warm the fireside haven -
Not to autumn will I yield,
Not to winter even!

Let the blow fall soon or late,
Let what will be o'er me;
Give the face of earth around,
And the road before me.
Wealth I ask not,hope nor love,
Nor a friend to know me;
All I ask,the heaven above,
And the road below me.

好きなように俺の人生を送らせてくれよ
他のカスみたいなことはどっかへいっちまえ
頭の上には陽気な空をくれよ
それと足元には脇道を
星の眺め付きの茂みのベッドと
川の水に浸すパン
俺みたいな男の生き方はそこにあるんだ
永遠の生き方がそこにある

遅かれ早かれ嵐よ吹くがいい
何だろうとこの身に降りかかるがいい
まわりに広がる大地をくれよ
それに俺の前に続く道を
富など探さない、希望も愛も
俺を知る友人もいらぬ
探すのはただ頭の上の空と
俺の足元の道

秋よやって来るがいい
俺のさすらうこの野原へと
木の上の鳥を黙らせ
蒼ざめた指を凍えさせながら
霜の野原を粥のように白くし
たき火のそばの休憩所を暖かくしろよ
秋などに俺は負けはしない
冬にさえも決して!

遅かれ早かれ嵐よ吹くがいい
何だろうとこの身に降りかかるがいい
まわりに広がる大地をくれよ
それに俺の前に続く道を
富など探さない、希望も愛も
俺を知る友人もいらぬ
探すのはただ頭の上の空と
俺の足元の道


ヴォーン・ウイリアムスの歌曲の代表作といえば、(初期の作品ということもあり異論も多いでしょうが)、この「旅の歌」ではないかと私は思います。
「宝島」などの小説でも知られたイギリスの文学者R.L.スティーヴンソンが1895年に発表した詩集「旅の歌とその他の詩 Songs of Travel and Other Verses」の中から9編を選んで20世紀の初めに書かれたこの歌曲集、恐らく意図してのことでしょう、曲の構成といい雰囲気といいシューベルトの「冬の旅」のようなシチュエーションとなりました。但し時代が新しくなった分だけ若者の心は複雑で、もっとデリケートになったように思えます。第1曲の「放浪者(Vagabond)」は冬の旅の第1曲「おやすみ」にリズムといい雰囲気といいソックリな悲しい行進曲なのですが、「富や希望など求めない」であるとか「友人もいらぬ」など、世間を意識しすぎたがゆえに適応できなくなってしまった若者の苦悩が歌われます。興味深いことにこの第1曲目のスティーヴンソンの原詩では副題に「To an air of Schubert(シューベルトの節に)」とあり、本当に「冬の旅」の第1曲か「水車小屋の娘」の第1曲「さすらい」を意識している詩といえるのです。歌曲集の最初の歌であるばかりでなく、彼の詩集でも最初の詩として取り上げられています。
原詩にご興味がおありの方は、Songs of Travel and Other Verses Robert Louis Stevensonとして検索頂くと詩集全体を載せたサイトがいくつも見つかります。日本でも最近は青空文庫をはじめとして増えてきましたが、著作権切れの作品のアーカイブの充実は外国では目を見張るばかりということを、外国の詩の翻訳をしていると痛感させらるところです。

( 2008.09.15 藤井宏行 )


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