Slavnoe more - svjashchennyj Bajkal |
栄光に満ちた湖、聖なるバイカルよ |
Slavnoe more - svjashchennyj Bajkal Slavnyj korabl’ - omulevaja bochka Ekh,barguzin,poshevelivaj val Molodtsu plyt’ nedalechko Dolgo ja tjazhkie tsepi vlachil Dolgo brodil ja v gorakh Akatuja Staryj tovarishch bezhat’ posobil Ozhil ja,volju pochuja Shilka i Nerchinsk ne strashny teper’ Gornaja strazha menja ne pojmala V debrjakh ne tronul prozhorlivyj zver’ Pulja strelka minovala Shel ja i noch’,i sered’ belogo dnja Bliz gorodov oziralsja ja zorko Khlebam kormili krest’janki menja Parni snabzhali makhorkoj Slavnoe more - svjashchennyj Bajkal Slavnyj moj parus - kaftan dyrovatyj Ej,barguzin,poshevelivaj val Slyshatsja groma raskaty. Ej,barguzin,poshevelivaj val Slyshatsja groma raskaty. |
栄光に満ちた湖、聖なるバイカルよ、 栄光の船、オームリの樽よ おい、バルグジンの風よ、波を立たせるがいい 若い力なら漕ぎ着くのも遠くはない! 長いこと私は重い鎖を引きずり 長いことアカトゥイの山々をさまよった 古くからの仲間が逃走を助けてくれて 、 私に自由がよみがえったのだ シルカもネルチンスクも今は恐ろしくない 山の警備隊も私を捕まえられなかった 森の中でも餓えた獣は襲ってこなかった 弾丸も 矢もそれたのだ そして私は歩いた 夜も昼も 町の近くでは鋭くあたりを見渡した 農婦たちは私にパンを恵んでくれたし 男たちは煙草をくれたのだ 栄光に満ちた湖、聖なるバイカルよ、 栄光の我が帆、破れた上着よ エイ、バルグジンの風よ、波を立たせるがいい 雷のとどろきが聞こえる エイ、バルグジンの風よ、波を立たせるがいい 雷のとどろきが聞こえる |
帝政ロシア時代にシベリアに流刑された若い政治犯の物語でしょうか。「シルカもネルチンスクも」と3番にありますがこれらはシベリアの知名で、当時流刑地とされていた町なのだそうです。いずれもかなりバイカル湖よりも東方にありますので、この主人公は西に、つまりペテルスブルグを目指して歩いていったことになります。オームリというのはバイカル湖に棲むマス科の魚。それを入れる樽を小舟に仕立てて湖を渡っているところなのですね。バルグジンというのはバイカル湖東方の土地のことで、ここの山から吹き付ける風をバルグジンの風と呼んでいるのだそうです。これも彼にとってはうれしい東から吹いてくる追い風。
もうすぐまた自由になる喜びをしみじみと歌うたいへんに美しい歌曲です。
もともとこの詩は1848年にヴェルフネウジンスク(今はウラン=ウデと呼ばれるバイカル南方の人口40万ほどの都市)の学校の先生をしていたドミトリー・ダヴィドフという人が書いた「バイカルの逃亡者たちの魂」という詩に、その後1850年代になって誰とはなしに付けられた歌なのです。一説によれば作曲したのはその後行方不明になったまさにこんな境遇の逃亡者だ、とも言われていますが本当のところは良くわかりません。
それと元の詩は10連以上もある大変に長いものだったようですが、歌になったものはご覧のようにかなりコンパクトにまとまっています。また歌い継がれるうちに変わっていったのでしょう。言葉もかなり原詩とは違っているようです。
今は合唱団で歌われることが多いようですが、やはりこれはひとりの逃亡者の喜びの歌なので、独唱でじっくりと味わう方が私は素敵だと思います。85年のロシアのバス、エフゲニー・ネステレンコの来日公演でこの歌を聴けたのは今でも忘れがたい思い出です。
( 2008.09.03 藤井宏行 )