Esli zhizn’ tebja obmanet Op.12-1 Shest' romansov |
もし君たちが人生に裏切られても 6つのロマンス |
Esli zhizn’ tebja obmanet, Ne pechal’sja,ne serdis’, V den’ unynija smiris’: Den’ vesel’ja ver’,nastanet. Serdtse v budushchem zhivet; Nastojashchee unylo; Vse mgnovenno,vse projdet; Chto projdet,to budet milo. |
もし君たちが人生に裏切られても 悲しんではならぬ、怒ってはならぬ 憂鬱な日々であっても受け入れるのだ 喜びの日はきっと、またやってくるのだから 心は未来に向かって生きている たとえ今はつらくとも すべては束の間、すべては過ぎ去る 苦悩が終わったときには、その苦悩さえも愛おしくなるのだ |
1825年、デカブリストの反乱が失敗に終わり、プーシキンの友人であった青年貴族たちが次々と逮捕・投獄されていきました。そんな友人たちにプーシキンが寄せた詩がこれです。
失意のどん底にあるであろう友人たちを力づける詩人の言葉は実に含蓄があります。訳を試みる中で私の日本語の語彙の乏しさをこれほど恨めしく思ったことはそうはありません。
私の日本語訳を介してしまうと、なんとも陳腐な励ましの言葉になってしまうのですけれども、この詩は間違いなくプーシキンの傑作のひとつだと思います。
この詩にはまさにデカブリストの乱と同時代に活躍したアリャビエフが付けた曲があるのだそうです。非常に興味があるところなのですが、これはまだ耳にできず。またロシア5人組のひとり、ツェーザル・キュイの付けた歌曲もありますが、それよりも聴いていて心に染み入ってきたのはもう少し若い世代の作曲家グリエールのものでした。絶望の底にあるであろう友人たちをひたすら優しく、温かく慰めるこの歌は、たとえ時代が変わっても言葉が変わってもきっと多くの人の心に響いてくることでしょう。
「すべては束の間、すべては過ぎ去る」のところでクライマックスを作ってから、一瞬の溜めを置いてしみじみと「その苦悩さえも愛おしくなるのだ」とつぶやくところなどは、ありがちな造りだと言われてしまえばその通りなのですがやはり感動させられてしまいます。
残念ながらグリエールの歌曲自体が取り上げられることが実に少ないので、ご紹介はしましたもののこれをお聴き頂くのはかなり難しいかも知れません。
Coniferレーベルにあったグリエール歌曲集のCDはまだ入手可能なのでしょうか。この曲だけでなく、ロシア歌曲の知られざる宝に触れることができてもし見つけることができれば絶対のお勧めなのですが。
あとは最近見つけた、カナダのCBCレーベルから出ているソプラノのヨアンナ・コロミエツの歌。彼女はリリックなソプラノなので、この歌も夢見るように美しいです。他にもリリカルなロシア歌曲の名曲をたくさん集めていて実に素晴らしいCDでした。
( 2008.08.31 藤井宏行 )