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Mädchenwünsche   Op.9-4  
  Gesammelte Lieder,Gesänge,Romanzen und Balladen
オトメの願い  
     集められた歌曲・歌・バラードとロマンス Heft 8

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Mädchenwünsche (1769)

曲: レーヴェ (Johann Carl Gottfried Loewe,1796-1869) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


O fände für mich
Ein Bräutigam sich!
Wie schön wär es da,
Man nennt uns Mama.
Da braucht man zum Nähen,
Zur schul nicht zu gehen.
Da kann man befehlen,
Hat Mägde,darf schmälen,
Man wählt sich die Kleider,
Nach Gusto den Schneider,
Da läßt man spazieren,
Auf Bälle sich führen,
Und fragt nicht erst lange
Papa und Mama.

ああ、あたしにいればなあ
ひとりのおムコさんがさあ!
なんてステキなことなんでしょ
ママって呼んでもらえるのって
縫い物をしてさえいれば
学校に行かなくてもいいんだしぃ
いろいろ命令だとかをー
メイドにしたりもできるしぃ
お洋服とかもさあ
スキなのをお店で選べるしぃ
いろいろ遊び歩けるしぃ
パーティとかにも行けるしぃ
もう何も相談しなくてもいいのよ
パパやママに


現代の感覚とは少々ズレているところもないではありませんけれども、まあこういうムシのいいことを夢想する女の子は今でも決して少なくはない筈です。もちろん男の方だって「若くて美人で従順で...」と勝手な事をほざいているのはたくさんいますからどっちもどっちではありますが。
当時は恐らく箱入り娘をあまり徹底して教育したりはしていなかったと思いますので、この子、喋っている内容は小学生のようにとても稚拙に感じられますけれども実のところはハイティーンくらいでしょうか(小学生くらいの年頃の娘がこんなことを考えていたらそれはそれで怖すぎるものがありますし)。
しかしゲーテの人間観察の目は素晴らしいと思います。またこういうのを詩集の中にさりげなく織り込んでしまうところもまたなんというか...(ゲーテ1769年の「新詩集(Neue Lieder)」に所収の詩です。まだ若い頃の作品なのですね)
そこでここでも真面目に文学をされておられる方のお怒りを買うかもしれないですけれども、私のできる限りで思い切りくだけた訳を付けてみました。今頃こういう喋り方をする娘さんがいるのかどうかは分かりませんが、1980年代頃によく揶揄された喋り方っぽくしてみましたけれどもいかがなものでしょうか。
この詩にバラードの名手カール・レーヴェが付けた音楽はとても洒落たワルツ。少々鄙びた、といいますかイモっぽい感じも漂わせながらとてもコケティッシュに歌われます。ピアノのきらめくような高音の響きが「メイドに命令なんか」のところで顔を出すところなどは思わず顔がほころんでしまいます。なんとも微笑ましいワガママではありました。
残念ながらブリギッテ・ファスベンダーのメゾで聴いたことがあるだけなのですが、彼女もとても楽しそうに、あざといくらいの表情をつけてくれているので大変に楽しい聴きものでした。

( 2008.08.28 藤井宏行 )


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