Dämmrung senkte sich von oben Op.59-1 Acht Lieder und Gesänge |
たそがれが上方から降り来て 8つの歌曲と歌 |
Dämmrung senkte sich von oben, Schon ist alle Nähe fern, Doch zuerst emporgehoben Holden Lichts der Abendstern. Alles schwankt in's Ungewisse, Nebel schleichen in die Höh', Schwarzvertiefte Finsternisse Widerspiegelnd ruht der See. Nun am östlichen Bereiche Ahn' ich Mondenglanz und Glut, Schlanker Weiden Haargezweige Scherzen auf der nächsten Flut. Durch bewegter Schatten Spiele Zittert Lunas Zauberschein, Und durch's Auge schleicht die Kühle Sänftigend in's Herz hinein. |
たそがれが上方から降り来て、 すでにあらゆる近きものが遠くなる。 だが、最初に上に昇ったのは 優美な光の夕星。 あらゆるものがおぼろげな中で揺れ、 霧はそっと高みに流れる。 黒く深まった闇を 映しながら、湖は憩う。 いま東のあたりに 月の輝きと光を私は予感する。 ほっそりとしたヤナギの髪さながらの枝々は すぐそばの水辺で戯れている。 動く影が戯れる間で 月の放つ魔法の光が震える。 そして、目を通って冷気は 気持ちを和らげながら心の中に忍び入る。 |
ブラームスの1870〜71年の作曲(8分の3拍子、ト短調)。
詩はゲーテが78歳のときに書いたものという。
ブラームスの曲は「ゆっくりと(Langsam)」という表示のもと、4小節の前奏の後、歌が始まる。
最初の2行は堅固なピアノ音形の上を静かに歌われるが、3行目からピアノパートがシンコペーションになり、歌と交互に打つリズムで動きを見せる。
4行目が終わると、ピアノパートは細かい音形で孤を描きはじめ、5行目が始まると同時に歌とピアノパートがバッハのようなポリフォニックな響きを聴かせる。
その後もたゆたうようにまとわりつく歌とピアノの関係がなんとも神秘的な響きを醸し出している。
私がはじめてこの曲を聴いたのはアーメリング(Elly Ameling)のリサイタルだった。
その時は渋い曲だなという印象ぐらいしかなかったが、その後、彼女はヤンセン(Rudolf Jansen)と共にこの曲を録音し(Hyperion : 1990年8月録音)、それを聴いて私はすっかりこの曲の虜となった。
ブラームスらしい重厚さの中に不思議な神秘性があり、それを暗い音色を獲得したアーメリングの深く繊細な語りかけが見事に表現し尽くしていた。
なお、最終行の旋律は高音で装飾的なものと、ひたすら低く下降するものとの2種類あるが、アーメリングは高い方を歌っている。
低い旋律は私が聴いたかぎりではそれほど魅力的に響かないので、あくまでも低声歌手の歌いやすさを考慮したものだろう(高い方もそれほど音域的に高すぎるとは思わないが)。
なお、この詩にはオットマール・シェックによる穏やかな歌曲(Op. 19a-2)もある。
( 2008.08.28 フランツ・ペーター )