Wiegenlied |
子守歌 |
Guten Abend,gut Nacht, Mit Rosen bedacht, Mit Näglein besteckt, Schlupf unter die Deck': Morgen früh,wenn Gott will, Wirst du wieder geweckt. |
眠れ 眠れ バラの花のそばで カーネーションに囲まれて、 ベッドの中で 明日の朝に神様が 目を覚まさせてくれるその時まで |
訳が下手なので気付かれない方も多いかと思いますが、この詩、ブラームスの子守歌と同じものです。アイブズは学生時代、他の作曲家が手がけた有名な詩に作曲するという試みをいろいろ試みていたのだそうで、他にもブラームスのが有名な「恋歌(ヘルティ)」・「野にひとりいて(アルマース)」とか、シューマンのがおなじみの「おまえは花のよう(ハイネ)」・「私は恨むまい(ハイネ)」など、おやっというような曲に挑戦しています。曲はもうとろとろの後期ロマン派で、R・シュトラウスが書いたらこんな風になるのかなという感じの甘い・甘い・新古今的技巧美を尽くしたもので、後の実験的作風からするとちょっと意外な所もありますが、それでも当時の保守的なアメリカ音楽界においては相当斬新だったのかも知れません。ピアノの響きの部厚さに後の面影を少し感じるところもありますが、そこが指導教官からはいつも批判されていたのだそうです。
中でもこの子守歌、あの愛らしいブラームスのものと訣別すべく、非常にけだるく、重たいものになりました。
もっとも、詩からして直訳すれば「神様の思し召しがあればあした目覚めさせてくれるだろうから」と結構重たいので、意外と的を得ているのかも知れません。
他の曲も非常に面白く料理されているので、ぜひご一聴を。
TELDECから出ている、アイブズ・グリフィス・マクダウェルアメリカの作曲家によるドイツ語歌曲集というのに収められています。
( 1999.01.04 藤井宏行 )