Pesn’ Min’ony Op.25-3 6 Romansov |
ミニョンの歌 6つのロマンス |
Ty znaesh’ kraj,gde mirt i lavr rastet, Glubok i chist lazurnyj neba svod, Tsvetet limon i apel’sin zlatoj, Kak zhar,gorit pod zelen’ju gustoj? Ty znaesh’ kraj?... Ty znaesh’ kraj?... Tuda,tuda,tuda s toboj Khotela b ja ukryt’sja,milyj moj! Ty znaesh’ kraj? Tuda s toboj Khotela b ja ukryt’sja,milyj moj! Ty znaesh’ vys’,s stezej po krutiznam, Loshak bredet v tumane po skalam, V ushel’jakh gor otrod’e zmej zhivet, Gremit obval i vodopad revet?... Ty znaesh’ put’? Ty znaesh’ put’? Tuda,tuda i nam s toboj Prolozhen sled: ujdem,vlastitel’ moj! Ty znaesh’ put’? Tuda i nam Sled prolozhen: ujdem,vlastitel’ moj! Ty znaesh’ dom na mramornykh stolbakh, Sijaet zal i kupol ves’ v luchakh; Gljadjat kumiry molcha i grustja: Chto,chto s toboj,bednoe ditja? Ty znaesh’ dom?... Ty znaesh’ dom?... Tuda s toboj ujdem,roditel’ moj! Ty znaesh’ kraj,gde mirt i lavr rastet, Glubok i chist lazurnyj neba svod, Tsvetet limon i apel’sin zlatoj, Kak zhar,gorit pod zelen’ju gustoj? Ty znaesh’ kraj?... Ty znaesh’ kraj?... Tuda,tuda,tuda s toboj Khotela b ja ukryt’sja,milyj moj! Ty znaesh’ kraj? Tuda s toboj Khotela b ja ukryt’sja,milyj moj! |
あなたは知っていますか、ミルテと月桂樹の育つあの国を 青い空は深く澄んでいて レモンやゴールデンオレンジの花が 緑の葉の下に燃え盛るように咲くところを? 知ってますか、知ってますかあの国を? そこへ、そこへ、そこへあなたと 一緒に逃げ出したいのです、いとしい人よ! 知ってますかあの国を?そこへあなたと 一緒に逃げ出したいのです、いとしい人よ! あなたは知っていますか、あの山を 狭く険しい道をロバが登って行く山を その山には血のドラゴンが住んでいて 雪崩が響き、滝がうなるあの山を? 知ってますか、知ってますかその道を? そこへ、そこへ、あなたとわたし 道は続きます:さあ行きましょう、私のご主人様! 知ってますかその道を?そこへわたしたち 道は続きます:さあ行きましょう、私のご主人様! あなたは知っていますか、大理石の柱のあるあの家を? 輝く広間と光に満ち溢れた丸い屋根を 見下ろす偶像たちが沈黙し悲しげに 「どうしたのだ、哀れな子よ?」と語る家を 知ってますか、知ってますかあの家を? そこへあなたとでかけましょう、私のお父様! あなたは知っていますか、ミルテと月桂樹の育つあの国を 青い空は深く澄んでいて レモンやゴールデンオレンジの花が 緑の葉の下に燃え盛るように咲くところを? 知ってますか、知ってますかあの国を? そこへ、そこへ、そこへあなたと 一緒に逃げ出したいのです、いとしい人よ! 知ってますかあの国を?そこへあなたと 一緒に逃げ出したいのです、いとしい人よ! |
チャイコフスキーがゲーテの「ミニョンの歌」に付けた作品としては、最初期の「ただ憧れを知る者だけが」Op.6-6があまりにも有名ですが、実はゲーテの詩としては遥かに有名な「君よ知るや 南の国」につけた曲もあったのです。そればかりでなくOp.57にはもう一曲「語れとはおっしゃらないでください」というのもあり、実はチャイコフスキー歌曲においてはミニョンの歌は3種揃い踏みなのでした。これら3曲で興味深いのはそれぞれが初期・中期(前)・中期(後)の作品と分かれていることと、またひとつひとつをロシア語に訳した人が皆違っているということで、「憧れを」がレフ・メイ、「語れとは」はストルゴフシチコフ、そしてこの「君よ知るや」はフョードル・チュチェフということでこれらの詩の内容の原詩との違いもまた調べると面白いところです。
この「君よ知るや」はロシア詩人としてはかなりの大物とされるチュチェフ、訳詞もかなり自由にいじっています。特に目立つのは原詩の第2連と第3連をひっくり返していることでしょう。
3連だけは音楽のつくりも雰囲気も変わっているところも面白いところです。
チャイコフスキーは更に、この詩の第1連を繰り返して歌い最後の盛り上げをしています。
ピアノ前奏の南国を思わせるきらめき、そこに入ってくる歌の繊細なメロディ、「そしてそこへ」のところの語りに絡んでくるピアノ伴奏のこれまた印象的なメロディと、これもまた実によくできている歌です。個人的にはあのあまりにも有名な「ただ憧れを知るものだけが」よりもずっと素晴らしい作品のように思っているのですが、取り上げる人は圧倒的に少ない知られざるチャイコフスキー歌曲になってしまっています。
最近リリースされた、Naxosの歌曲全集の4集が入手しやすいと思いますので、そこでのカザルノフスカヤの歌でぜひ聴いてみてください。古今東西の作曲家のつけたミニョンの歌の中でも私は指折りの傑作だと思っています。
( 2008.08.01 藤井宏行 )