Nimfa Op.56-1 Dva romansa |
ニンフ 2つのロマンス |
Ja znaju,otchego u etikh beregov Razdum’e tajnoe ob”emlet dukh plovtsov: Tam nimfa grustnaja s raspushchennoj kosoju, Poluzakrytaja pevuchej osokoju, Poroju pesn’ poet pro shelk svoikh vlasov, Lazur’ zaplakannykh ochej,zhemchug zubov I serdtse,polnoe ljubvi nerazdelennoj. Proedet li chelnok-plovets obvorozhennyj, Ee zaslushavshis’,perestaet gresti; Zamolknet li ona -- no dolgo na puti Emu vse chudjatsja napevy nad vodoju I nimfa v kamyshakh,s raspushchennoj kosoju. |
私は知っている なぜこの岸辺が 水夫たちの心をかくも惹きつけるのかを そこでは悲しそうな人魚たちが悲しみを静めようと ざわめく流れに半分身を隠しながら 時折絹のような彼女たちの髪の歌を歌っているのだ 涙をたたえた蒼い瞳、真珠のような歯 そして心は、満たされない恋でいっぱいだ 舟が通りかかろうものなら、魔法にかかった水夫たちは その歌を聞いて 漕ぐのをやめる 人魚が歌を止めても 歌は長く耳に残る それは魔法のように水の上を だが人魚たちは葦の陰で、いつまでも悲しみを静めようとしているのだ |
ヨーロッパに広く伝わる人魚の伝説に基づいた詩でしょうか。もっともロシア語でもNimfaというのは妖精(辞書によると沼地などの精なのだとか)ですから、人魚と訳すのは少し問題ありかも知れません。しかしこの詩から私が感じるイメージはライン川の有名なローレライ、船を沈めて船乗りたちを殺しこそしませんが、髪を梳かしながら悲しい歌を歌って彼らを魅了するところなどはまさにそのものです。そこであえて妖精ではなく、よりイメージが近い人魚ということにしました(ローレライが人魚というわけではないですが...)
この歌の幻想的に美しい雰囲気は、リムスキー=コルサコフの歌曲の中でも際立って魅力的です。彼のキャリアの中でもほとんど最後の歌曲。1898年の作曲だそうです。あまり取り上げられることが多くないのが残念ですが、彼の作品の中でも指折りの傑作ではないかと私などは思います。ソプラノのガリーナ・ヴィシネフスカヤがEMIの録音で実に見事な歌を聴かせてくれています。
( 2008.08.01 藤井宏行 )