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Tikho vecher dogoraet   Op.4-4  
  Chetyre romansa
静かに夕暮れが燃え立っている  
     4つのロマンス

詩: フェート (Afanasij Afanas’evich Fet,1820-1892) ロシア
      Серенада (1850)

曲: リムスキー=コルサコフ (Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov,1844-1908) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Tikho vecher dogoraet,
Gory zolotja;
Znojnyj vozdukh kholodaet,-
Spi,moe ditja!

Solov’i davno zapeli,
Sumrak vozvestja;
Struny robko zazveneli,-
Spi,moe ditja!

Smotrjat angel’skie ochi,
Trepetno svetja;
Tak legko dykhan’e nochi,-
Spi,moe ditja!

静かに夕暮れが燃え立っている
山を黄金色にして
熱い空気も冷めていく
眠れ、愛しい君よ

ナイチンゲールも既に歌いだした
夜霧も立ちこめている
弦もひそやかに響いている
眠れ、愛しい君よ

天使のような瞳が見つめている
震えながら光っている
夜の息吹はとても穏やかだ
眠れ、愛しい君よ


ピアノの前奏が息を飲むように美しいこの曲、夕暮れに愛しい人を眠りへと誘っています。セレナーデというと夜に窓辺で「さあ起きて出てきておくれ」と歌うような曲ですから、この曲のように眠れと歌うのは極めて異色。にも関わらずメイの素朴この上ない歌詞も相まってとても素敵な恋歌になりました。リムスキー=コルサコフ歌曲の中でも愛すべき逸品のひとつだと思いますが取り上げる人がほとんどいないのが残念。私が聴けたのもボリス・クリストフのバスの歌くらいです。これがまた溜息がでるくらい巧いんで、機会がありましたらぜひお聴きください。

ここにもまたラフマニノフの「わが子よ お前は花のように美しく」(よく流通している邦題に従います)やチャイコフスキーのロマノフ公の詩による「セレナード」同様、恋人によせる呼びかけにDitja(Baby/Child)を使っています。チャイコフスキーの方のセレナードでも歌は「さあ起きて」ではなくて「お眠り」であったのが興味深いところ。そして日本の既訳ではラフマニノフの伊東一郎氏も、チャイコフスキーの小野光子氏も、そしてこのリムスキー=コルサコフの園部四郎氏も皆これを「わが子」と訳し、子供に寄せる歌と解釈されています。確かにその辺の微妙なニュアンスがこのいずれもの3つの歌にはあり、恋人に捧げる歌でありながら相手を守ってあげたい子供扱いしているというのが興味深いところ。私もこれら2曲を先に手がけていなければ、このリムスキー=コルサコフの歌では「お眠り、私の坊や!」と訳してしまっていたと思います。

( 2008.08.01 藤井宏行 )


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