Krasavitsa rybachka |
きれいな漁師の娘 |
Krasavitsa rybachka! Prav’ k beregu lad’ju I vyd’,i sjad’ so mnoju, daj ruku mne svoju. Golovku mne na serdtse bez strakha polozhi. Morskim volnam bespechno v verjaesh’sja zhe ty. A serdtse to zhe more: to buri v nem,to tish’, I mnogo perlov chudnykh sokryto v glubine. |
きれいな漁師の娘さん! 舟を岸に着けておくれ こっちに来て、おいらと一緒に座っておくれ あんたの手でさわっておくれ おいらの胸にあんたの頭を乗せてよ こわがったりなんかしないでさあ 海の波にはおじけずに あんたは身を任せてるんだからさあ おいらの心も海と同じさ 嵐になったり、凪いだりしてさ おまけにきれいな真珠が一杯 この深い底には隠れているってもんだ |
ハイネの詩にしては非常にストレートな恋の歌。シューベルトをはじめとするドイツの作曲家たちにも良く取り上げられる人気の詩です。ここではD.クロポトキンという人のロシア語訳ですが、内容的には原詩と大きく違うところはなさそうでした。ボロディンの付けた曲は彼が二十歳そこそこの初期のもの(1855頃の作曲)ということもあり屈託のない民謡調。古くからあるロシア民謡と言われても信じてしまいそうです。この時期、彼はピアノとチェロで伴奏される歌曲をいくつも書いていますが、これもその中のひとつ。
これらふたつの伴奏楽器が大活躍して、本当にロシアの農村で人々が輪になって踊っているときの音楽のようです。そんなイメージで私も素朴な訳を試みてみました。
ハイネの原詩はこんな感じです。日本語訳はまあロシア語からのものとほぼ同じということで省略させてください。
Du schönes Fischermädchen,
Treibe den Kahn ans Land;
Komm zu mir und setze dich nieder,
Wir kosen Hand in Hand.
Leg an mein Herz dein Köpfchen
Und fürchte dich nicht zu sehr;
Vertraust du dich doch sorglos
Täglich dem wilden Meer.
Mein Herz gleicht ganz dem Meere,
Hat Sturm und Ebb' und Flut,
Und manche schöne Perle
In seiner Tiefe ruht.
( 2008.08.01 藤井宏行 )