Iz slez moikh |
ぼくの涙から |
Iz slez moikh vyroslo mnogo dushistykh i nezhnykh tsvetov. I vzdokhi moi perelilis’ v polunochnyj khor solov’ev. I esli menja ty poljubish’, maljutka - tsvetochki tvoi! I zvuchnuju pesn’ pod okoshkom tebe zapojut solov’i. |
ぼくの涙から育つのだ たくさんの 優しく 美しい花々が そしてぼくの吐息からは湧き出すのだ 夜中のナイチンゲールの歌声が そしてもし君がぼくに恋してくれるなら 取るがいい、君の花だ! そして窓辺で優しい歌を歌うのは 君のナイチンゲールなのだ |
ご存知ハイネの抒情小曲集の一篇。シューマンが歌曲集「詩人の恋」の中の一曲として取り上げていることでも良く知られた詩ですね。ここではロシアの抒情詩人、レフ・メイの訳によるロシア語詞で歌われていますが音楽の雰囲気はシューマンのものに良く似ています。どれくらい正確にできているかは分かりませんが、ここではそのメイの書いた詞から訳してみました。
この曲で面白いのは、1950年にアメリカでトニー賞を取った全編ボロディンの音楽で構成されたミュージカル「キスメット」の中で、若き王子カリフが出会った娘マルシナーと恋に落ちるシーンで歌われる有名なナンバー「ストレンジャー・イン・パラダイス」(ボロディンのオペラ、イーゴリ公の中の名曲「ポロヴェッツ人の踊り」を巧みにアレンジしている曲です)の導入の部分に使われていることです。こんな感じでマルシナーの戸惑う気持ちがこの歌曲のメロディで語られたあと(著作権のため大意に留めております)
マルシュナー
どうして桑の木の葉は
今までと違った響きでささやくの?
どうしてナイチンゲールは
昼間に桑の木の枝で歌うの?
何か不思議な魔法で
この庭は私の知っている庭ではなくなってしまった
ええ、ここは天国よ
ほんの少し前にはただの庭だったのに
カリフが、あのポロヴェッツ人の踊りの冒頭の女声合唱の名旋律を“Take my hand, I’m a stranger in paradise”と高らかに歌います。そこの繋ぎの絶妙なこと。これを聴き慣れるとこの曲がもともとこのように書かれているのだと錯覚してしまいそうな程です。揺らぐ心、そしてときめきがこのメロディに非常に良く合っていますね。この「ストレンジャー・イン・パラダイス」がアメリカン・スタンダードに残った理由の第一はもちろんボロディンの名旋律にあるのは言うまでもないですが、編曲者たちのこんな感じの選曲の妙があることもまた確かでしょう。
( 2008.08.01 藤井宏行 )