Margaritki Op.38-3 Shest’ stikhotvorenij |
マーガレット 6つの詩 |
O,posmotri,kak mnogo margaritok I tam,i tut, Oni tsvetut,ikh mnogo,ikh izbytok. Oni tsvetut. Ikh lepestki trekhgrannye, kak kryl’ja, Kak belyj shelk. V nikh leta moshch! V nikh radost’ izobil’ja V nikh sletlyj polk. Gotov’,zemlja,tsvetam iz ros napitok, Daj sok steblju... O,devushki, O,zvezdy margaritok, Ja vas ljublju! |
ああ、ご覧、何てたくさんのマーガレットの花が あそこにもここにも みな咲いている、たくさんの花、とてもたくさんの みな咲いている その花びらは三角形で 翼のよう 白い絹のよう 花たちは夏の力だ 喜びの爆発だ 輝く連隊だ 大地より、花たちは露を飲んで 茎をしめらせる おお、少女たちよ おお、星のマーガレットよ ボクは君たちが好きだ! |
1916年に作曲された6曲からなる作曲者最後の歌曲集Op.38、革命を目前にしてロシアをめぐる政治・社会情勢が緊迫し、彼の生活にも少なからず悪い影響を与えたということもあるのでしょう。どの曲を聴いてもOp.26までの歌曲作品で聴かれたような圧倒的な魅力に欠ける寂しいものになってしまっているように思えます。
作曲者自身が気に入って、後にピアノ独奏曲に編曲したこともあり、この6曲の中では一番良く知られているこの曲にしても、同じ路線の名曲である「ライラック」や「私の窓辺に」などと聴き比べてみると、メロディには強く訴えかける雄弁さはありませんし、伴奏も含めて何かおどおどしているような印象で、あまり楽しめないうちにクライマックスもなくいつの間にか終わってしまいます。
同じ詩をもっと若い時に取り上げていたならば、あるいは時代が彼をこれほどまでに翻弄せずにいたならばもっと素晴らしい歌ができていたであろうに、と思っても詮無いことではあるのですが、まだ40代の半ばで書いたものが最後の歌曲集となってしまう運命の酷薄さ。なんとも悲しいことではあります。
というわけでこの曲は取り上げるかどうか悩んだのですが、彼のこのような不幸を音で表現してくれる証言者としてご紹介することにしました。彼の歌曲集を作品番号順に聴くと本当に恐ろしい程にその落差が感じられます。
なおゼーダーシュトレームの入れた歌曲全集の解説では、この歌曲集Op.38は詩人の選択も斬新で、音楽にもかなり実験的な色合いが強く、彼のチャレンジ精神を反映した作品群だとありました。確かにその面もあるのでしょうが、私が聴いて見て率直に感じたのはやはり冒頭に書きましたような不安感です。
( 2008.08.01 藤井宏行 )