Pred ikonoj Op.21-10 Dvenadtsat’ romansov |
聖像画の前で 12のロマンス |
Ona pred ikonoj stojala svjatoju; Skrestilisja ruki,usta shevelilis’; Iz glaz eja slezy odna za drugoju Po blednym shchekam zhemchugami katilis’. Ona povtorjala vse ch’e-to nazvan’e, I vzor ozarjalsja molitvennym svetom; I bylo tak mnogo ljubvi i stradan’ja, Tak malo nadezhdy v molenii etom! Ona preklonilas’ i dolgo lezhala, Pril’nuv golovoju k zemle bezotvetnoj, Kak budto v tomlen’i nemom ozhidala, Chto golos nad neju razdastsja privetnyj. No bylo vse tikho v molchanii nochi, Lampada mertsala vo mrake trevozhnom, I skorbno smotreli Spasitelja ochi Na ochi,prosjashchija o nevozmozhnom. |
彼女は聖なるイコンの前に立っていた 彼女は腕を組んで、唇はわなないていた 目からは涙が、一粒また一粒と 真珠が転がるように頬を伝っていた 彼女は同じ名を呼び続けていた 彼女の瞳は礼拝のあかりに照らされていた そこにはたくさんの愛と苦悩 だがほんのわずかの希望しかこの祈りにはなかった 彼女は頭を垂れ、しばらくじっとしていた 彼女の額を静かな大地につけて まるで彼女は絶え間ない苦悩の中待っているかのようだ 聖像から彼女へと言葉が発せられることを だがすべては静かだ、死んだような夜に ろうそくが重々しい暗闇の中ちらついている 救世主の眼差しは悲しみに満ちているようだ 彼女の瞳には、不可能なものへの希求があったのだ |
イコンとはギリシャ正教やロシア正教で用いられる神様などを描いた画のことで、聖像、あるいは聖画像とも呼ばれます。コンピューターの「アイコン」の語源にもなっている言葉ですね。作詞のゴレニスチェフ=クトゥーツォフはムソルグスキーの友人で、「死の歌と踊り」や「日の光なく」などの暗くも重い傑作群を生み出した人。ここでも何とも救いのない情景を描いています。ラフマニノフのつけた音楽は、敬虔な礼拝堂での祈りの音楽にしては少々艶めかしさも感じさせるような雄弁なものではありますが、神様の姿絵とのこの救いの少ない対話を重々しくもしんみりと語ってくれています。レイフェルクスの雄弁にして美しい声の歌が非常に曲にはまっていて素晴らしいできばえでした(Chandos)。
( 2008.08.01 藤井宏行 )