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Sud’ba   Op.21-1  
  Dvenadtsat’ romansov
運命  
     12のロマンス

詩: アフーチン (Aleksei Nikolayevich Apukhtin,1841-1893) ロシア
      Судьба

曲: ラフマニノフ (Sergei Rachmaninov,1873-1943) ロシア   歌詞言語: ロシア語


S svoej pokhodnoju kljukoj,
S svoimi mrachnymi ochami
Sud’ba,kak groznyj chasovoj,
Povsjudu sleduet za nami.

Bedoj litso eja grozit,
Ona v ugrozakh posedela,
Ona uzh mnogikh odolela,
I vse stuchit,i vse stuchit:

Stuk,stuk,stuk...
Polno,drug,
Bros’ za schastiem gonjat’sja!
Stuk,stuk,stuk...

Bednjak sovsem obzhilsja s nej:
Ruka s rukoj oni guljajut,
Sbirajut vmeste khleb s polej,
V nagradu vmeste golodajut.

Den’ tselyj dozhd’ ego kropit,
Po vecheram laskaet v’juga,
A noch’ju s gorja,da s ispuga
Sud’ba skvoz son emu stuchit:

Stuk,stuk,stuk...
Gljan’-ka,drug,
Kak drugie pozhivajut.
Stuk,stuk,stuk...

Drugie prazdnovat’ soshlis’
Bogatstvo,molodost’ i slavu,
Ikh pesni radostno neslis’,
Vino smenilos’ im v zabavu:

Davno uzh pir u nikh shumit.
No smolkli vdrug bledneja gosti...
Rukoj,drozhashcheju ot zlosti,
Sud’ba v okoshko k nim stuchit:

Stuk,stuk,stuk...
Novyj drug k vam prishel,
Gotov’te mesto!
Stuk,stuk,stuk...

その巡礼の杖と
その暗い瞳で
運命の女神は、恐ろしい憲兵のように
私たちのあとをどこへでも追いかけてゆく

その恐ろしい顔で脅し
その白髪で脅しながら
彼女は大勢の人々を征服した
それでもなお戸を叩く、そして戸を叩く

ドン、ドン、ドン
もう十分だ、我が友よ
幸せを追いかけるのはもうやめろ!
ドン、ドン、ドン

哀れな男は運命ともう腐れ縁で
手に手を取って歩き回る
一緒に落穂を拾い集めながら
その報いに 共に飢えるのだ

一日中 雨は彼を濡らし
夕暮れには雪嵐が彼を襲う
そして夜には 苦しみとそして警告と共に
運命は彼の寝入りを叩き起こす

ドン、ドン、ドン
見るがいい、友よ
他人の暮らしぶりを
ドン、ドン、ドン

他の者たちの栄華は続く
富める者、若者、有名人
彼らの歌声は楽しく響き
酒が彼らの享楽に注がれる

彼らの祝宴は延々と続く
だが突然、蒼ざめた客たちは沈黙した
運命の手が 怒りに震えながら
彼らに向けて、小さな窓を叩く

ドン、ドン、ドン
新しい友がやってきたぞ
さあ席を空けてくれ
ドン、ドン、ドン



傑作が集中していて、ラフマニノフの歌曲作品の中でもよく耳にする曲の多い作品21の冒頭を飾る大作です。
クラシックの「通」の方によれば、ベートーヴェンの第5交響曲を「運命」と呼んではいけないのだそうですが、ここでアフーチンの詩「運命」にラフマニノフが付けたこの長大な歌曲では、まさにこの交響曲の第一楽章、あのあまりに有名なモティーフが繰り返し繰り返し、この運命が扉を叩いている情景の描写に使われています。単純な繰り返しではなく、元の作品と同じように表情を変えて展開していくので、それだけでも大変聴き応えがあります。ロシア歌曲においてグリンカの「真夜中の閲兵」やダルゴムイシスキーの「老伍長」、R-コルサコフの「預言者」といったドラマティックなバラード(歌物語)の系譜に連なる傑作と言えるでしょうか。またそれもあってボリス・クリストフなどのバス歌手たちによって好んで歌われているラフマニノフ歌曲のひとつでもあります。
シャリアピンと一緒に訪れた文豪レフ・トルストイの家でこの曲を試演したところ、大文豪はこのベートーヴェンの引用が気に入らなくて激怒した、という逸話も残っています。

( 2008.08.01 藤井宏行 )


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